地上波テレビ再送信のAereoに対する著作権侵害訴訟、米最高裁が審理へ

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地上波テレビ再送信のAereoに対する著作権侵害訴訟、米最高裁が審理へ

 地上波テレビのストリーミングサービスを展開するAereoと米主要テレビネットワークの間で続いている著作権侵害訴訟をめぐり、米連邦最高裁判所は10日、テレビネットワーク側の上告を受理して審理を行う方針を明らかにした。Aereoをめぐっては、一審に続いて控訴審でもテレビネットワーク側による業務差止めの仮処分申請が却下されているが、最高裁の下す判断がテレビ業界のビジネスモデルに影響を与えるのは確実で審理の行方が注目される。

 Aereoは米4大テレビネットワークの1つであるFoxの元最高経営責任者(CEO)バリー・ディラー氏率いるベンチャーキャピタルなどから資金提供を受け、2012年3月にニューヨークでサービスを開始した。その後ボストン、アトランタ、ソルトレークシティ、マイアミ、シカゴ、ヒューストン、ダラス、デトロイトの8都市にサービスを拡大している。同社のサービスは加入者ごとにコインサイズの超小型アンテナを用意し、個々のアンテナがユーザーのリクエストに合わせてABC, CBS,NBC, FOX, PBSなど約30チャンネルの番組を受信して、パソコン、スマートフォン、タブレット端末などウェブ対応のデバイスにストリーミング配信する仕組み。料金は最大20時間分の録画が可能なオンラインストレージ付きで月額8ドルとなっている。

 ケーブルテレビや衛星放送などの多チャンネル事業者はテレビネットワークに高額な再送信料を払って地上波テレビ番組を再送信しているのに対し、Aereoは対価を払わず無許可で番組を配信している。このためテレビネットワーク側はテスト運用の段階でAereoを著作権侵害でニューヨーク州の裁判所に提訴した。しかし、12年7月の一審判決に続き、第2巡回区控訴裁判所は昨年4月、Aereoのストリーミングサービスは加入者のリクエストに合わせて個々のアンテナが地上波の番組を受信し、それをブロードバンドで個別にストリーミング送信するもので、ケーブルテレビなどのような「公衆への番組再送信にはあたらない」とするAereo側の主張を認め、同社に対する業務差止めの仮処分申請を却下。10月にはマサチューセッツ州の裁判所も同様の決定を下している。

 一方、新興企業FilmOnがAereoを模倣して立ち上げた地上波テレビのストリーミングサービス「FilmOn X (旧称Aereokiller)」に関しては、ワシントンD.C.とカリフォルニア州の裁判所が著作権侵害にあたるとの判断を示している。

 最高裁がAereoのサービスを合法と判断した場合、ケーブルテレビや衛星放送事業者などがAereoのシステムを模倣して、テレビネットワークに対価を払わずに番組を再送信する可能性が出てくる。番組再送信料をめぐってしばしばテレビネットワークと対立しているケーブル事業者の間では、将来の展開を視野にAereoを擁護する向きも出ている。タイム・ワーナー・ケーブル(TWC)は次期テレビシーズンの番組再送信料に関する交渉が決裂し、昨年8月にニューヨークなど3市場で1カ月にわたりCBSの再送信を停止したが、その際、グレン・ブリット会長兼CEOが再送信を停止している間の代替策として、加入者にAereoの利用を促して物議を醸した経緯がある。その一方、Aereoのビジネスモデルが合法と認められた場合、ケーブルテレビの解約がますます加速すると考えられるため、
ケーブルビジョンなどは反Aereoの立場を表明している。

(Mediapost Publications, 2014/01/10 他)

(庵研究員著)

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