英国で著作権法改正へ、4月に制限規定を改正

海外ニュース

英国で著作権法改正へ、4月に制限規定を改正

 英ビジネス・イノベーション・職業技術省(BIS)は12月20日、2014年4月6日付で著作権の制限規定を改正する方針を発表した。デジタル時代に対応した著作物のより自由な利用を可能にするため、一定の条件下で著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できる制限規定の範囲を拡大する。

 英政府は知的財産制度改革の一環として著作権法の改正に取り組んでおり、制限規定の改正はその第一段階となる。知的財産庁(IPO)はカーディフ大学のイアン・ハーグリーブス教授が11年5月に公表した報告書「知的財産と成長戦略の見直し」(ハーグリーブス・レビュー)を基に著作権の例外規定の改正案を策定し、意見募集を経て最終案をまとめた。BISは14年上半期に導入または改正される法律や規制の概要をまとめた文書の中で「制限規定の改正は引き続き著作権者に対する保護を確保しながら、著作物の利用者に新たな基本的権利を保障するもので、著作権法の重要な改革になる」と指摘。著作物の円滑な利用が可能になることで、向こう10年間で5億ポンド(約850億円)経済効果が見込めるとしている。

 制限規定の改正で中心になるのは私的複製、引用、パロディの3項目。著作物の私的複製に関しては、インターネット上における著作権侵害に対応するため、すでに保有しているか、合法的に入手した著作物に対象を限定したうえで、私的使用を目的とする他の媒体や機器への複製(フォーマット変換)が認められる。一方、引用に関する現行規定は、すでに公開されている著作物を「評価および検証」の目的で利用する場合、公正な慣行を遵守することや、正当な範囲で行われることなどを条件として、権利者の許諾を得ずに著作物を引用することができると定めている。報道記事や学術論文などの引用を念頭に、改正後は評価や検証に限らず、「正当な目的」である場合は幅広く著作物の引用が認められる。さらに公正な取扱いを条件に、パロディーを目的とする作品の使用にも著作権の制限規定が適用される。風刺マンガや替え歌なども対象に含まれ、BISは同措置がクリエイティブ産業の活性化につながると説明している。

 このほか教育、研究、アーカイビングおよび保存、非商用目的の研究におけるデータ解析を目的とする著作物の利用に関しても、より広い範囲で制限規定が適用される。

 一方、著作権管理団体に対する新たな規制も今年4月から導入される。業界の自主規制がうまく機能しない場合、監督機関に介入の権限を与える規定を盛り込んだ「企業・規制改革法」に基づき、著作権ライセンス協会(Copyright LicensingAgency=CLA)が定めた行動規範(codes of practices)を逸脱する行為があった場合、IPOが著作権管理団体に対して最大5万ポンド(約800万円)の制裁金を科すなどのルールが導入される。

(Out-Law.com, 2013/12/20 他)

(庵研究員著)

コメントを投稿する




*

※コメントは管理者による承認後に掲載されます。

トラックバック