EMIと音楽ロッカーサービスMP3tunesの著作権侵害訴訟、米裁判所がDMCAセーフハーバーの適用認定

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EMIと音楽ロッカーサービスMP3tunesの著作権侵害訴訟、米裁判所がDMCAセーフハーバーの適用認定

 英大手レコード会社EMIがクラウドベースの音楽ロッカーサービスを展開する米MP3tunesを相手取った著作権侵害訴訟で、ニューヨーク連邦地方裁判所はこのほど、MP3tune側に有利な判決を言い渡した。MP3tuneのようなオンラインサービスプロバイダーは著作権者から権利侵害の申し立てがあった場合、違法コンテンツを速やかに削除しなければならないが、自社のサービスにアップロードされたすべてのコンテンツについて著作権侵害の法的責任を負うものではなく、権利者側が保管場所を特定していない違法コンテンツに関してはデジタルミレニアム著作権法 (DMCA)のセーフハーバー条項が適用されると結論づけた。

 MP3tuneはオンライン音楽配信サービスのパイオニアとして知られるMichaelRobertson氏が2005年に立ち上げたクラウドロッカーサービス。同社が運営する検索エンジン「Sideload.com」で好きな楽曲を探して「MP3tunes.com」のロッカーに保管し、好きな時に視聴できる仕組みだ。EMIはSideload.comがウェブ上の違法な音楽ファイルを見つる手助けをする一方、MP3tunes.comはこうした違法ファイルを保管し、権利者に対価を支払うことなくくり返し視聴できるサービスを提供していると指摘。Robertson氏とMP3tuneが「ネット上の著作権侵害を助長している」と非難し、2007年に訴訟を提起した。

 訴状によると、EMIはMP3tuneに対し、EMIが著作権を保有するすべての楽曲についてMP3tunes.comのストレージサービスから削除するよう求めている。これに対しMP3tuneは、EMI側が権利侵害を確認した楽曲についてはタイトルとURLをSideload.comのリンクから削除したものの、個々のユーザーがロッカーに保管しているファイル自体は削除していない。

 裁判所はまず、EMIが特定した違法サイトからサイドロードされた楽曲については検索サイトからURLなどを削除するだけでなく、MP3tuneのストレージサービスを利用しているユーザーのロッカーからファイル自体を削除しなければならないとの裁定を下した。一方、それ以外の楽曲に関しては、たとえMP3tunes.comに保管されている楽曲が違法にダウンロードされたものであったとしても、ユーザーがどこで違法ファイルを入手したかをMP3tune側で調べることは物理的に不可能で、サービスプロバイダーに対してそこまでの責任を負わせることはできないと指摘。

 こうしたケースについてはDMCAのセーフハーバー条項が適用されると結論づけ、EMIが主張する3万3,000件の侵害行為のうち、350件のみを著作権侵害と認定した。

 米国ではGoogleとAmazonもMP3tunesに類似したクラウドベースの音楽ロッカーサービスを展開している。大手レコード会社はこうしたサービスが著作権侵害を助長するとして対決姿勢を強めているが、ユーザーがアップロードするコンテンツに関して、プロバイダー側が著作権侵害の法的責任を負う必要はないとする今回の判決が出たことで、レーベル側は戦略の見直しを迫られそうだ。
(Out-LAW News, August 23, 2011 他)

(庵研究員著)

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