著作権管理システムの改革案、欧州議会で可決

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著作権管理システムの改革案、欧州議会で可決

 欧州議会は2月4日の本会議で、デジタル時代に対応した著作権管理システムの確立を目的とする指令案を賛成多数で可決した。音楽や映像のインターネット配信が急速に普及している現状に対応するため、EUレベルで著作権管理を効率化して国境を越えたサービス提供を容易にし、合法的なコンテンツ流通を促す。

 EU内にはおよそ250の著作権管理団体があり、各国の管理団体が国ごとに著作物の使用許諾を行って別々に著作権使用料を徴収している。そのため域内の複数市場でオンライン音楽配信サービスなどを提供する場合、事業者は各国でそれぞれ個別にライセンスを取得しなければならず、これが国境を越えたサービスを妨げる要因になっている。一方、EU各国の著作権管理団体は年間およそ60億ユーロの著作権使用料を取り扱っているが、一部の管理団体ではずさんな運営で巨額の損失を出し、権利者に利益分配できない事態に陥るといったケースも報告されている。欧州委員会はこうした現状を踏まえて2012年7月に著作権管理制度の改革案をまとめ、加盟国と欧州議会で検討を進めていた。

 指令案によると、新システムではEU全域で有効な共通の著作権ライセンスが導入され、オンライン音楽配信などを展開する事業者は、1カ国の管理団体から使用許諾を得れば国境を越えてサービスを提供できるようになる。一方、著作権者は著作権管理を委ねる団体を自由に選ぶことが可能になり、ずさんな運営や管理体制によって権利者の利益が失われる事態を回避することができる。このほか各国の著作権管理団体に対し、著作物を効率的に管理するためのデータベースの構築、権利者に対する著作権使用料の迅速な分配(徴収した年の年度末から9カ月以内)、年次報告書の提出などを義務付けることが指令案に盛り込まれている。

 EU加盟国はすでに指令案の内容で基本合意しており、閣僚理事会の正式な承認を経て新ルールが導入される。加盟国はその後2年以内に新指令に沿って国内法を整備しなければならない。

(Intellectual Property Watch, 2014/2/4)

(庵研究員著)

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