オーストラリア法制度改革委員会、フェアユース規定の導入を提言

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オーストラリア法制度改革委員会、フェアユース規定の導入を提言

 オーストラリア法制度改革委員会(Australian Law Reform Commission=ALRC)は
2月13日、著作権制度改革に向けた提言書を公表した。「著作権とデジタル経済(Copyright and the Digital Economy)」と題する提言書は、現行のオーストラリア著作権法(Australian Copyright Act)に盛り込まれた権利制限に関する規定がデジタル時代に即した適切な内容かどうかに焦点を当てた、1年半にわたる検証作業をもとにまとめたもので、ALRCはフェアユース規定の導入を勧告している。

 ALRCはフェアユースを導入するメリットについて、「新たな技術やサービスに適用できる柔軟な制限規定であり、デジタル経済のもとで決定的な意味を持つ」と強調。フェアユースの適用対象として調査・研究、批評・評論、ニュース報道、専門的助言、引用などを挙げている。同委のジル・マッキオー教授(調査担当)は「フェアユースを導入することで著作物の円滑な利用を促進し、競争とイノベーションを促すと同時に、著作権者の権利を保護することができる」と指摘。フェアユースには予測可能性や法的安定性の面で懸念があることを認めたうえで、著作権法を弾力的に適用できることがより重要との考えを示した。

 フェアユース規定をめぐっては、インターネットやIT関連企業、教育産業、芸術・文化団体などが導入を支持する一方、大半の著作権者は導入に反対している。ALRCはこうした現状を踏まえ、フェアユースの導入が難しい場合は「次善の策」として、現行法で定められた「フェアディーリング」と呼ばれる権利制限規定を見直し、デジタル時代に対応した内容に修正することを提言している。フェアユースは権利制限に関する一般条項を定めているのに対し、フェアディーリングは個々の権利制限の内容に応じて中間的な一般条項を設けている点が特徴で、フェアユースに比べて権利制限を認める目的が限定されている。

 ALRCはこのほか、保存を目的とした図書館やアーカイブなどによる資料の複製、訴訟手続き、特定の公文書へのアクセスなどに関する著作権の例外規定の整備や、孤児著作物の利用を円滑化するためのルール作りなどを提言している。

 ALRCのロザリンデ・クラウチャー委員長は「慣例ではなく、より原則に基づく著作権法へのアプローチから提言書をまとめた。クリエイターと創作物の市場を保護して著作物の合法的な利用を促進し、法律を簡素化してイノベーションと経済成長の環境を整えるために著作権制度の改革を進める必要がある」と指摘している。

(Australian Law Reform Commission Press Release, 2014/2/13 他)

(庵研究員著)

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