EUが米国との「セーフハーバー協定」の見直しに着手、NSAの盗聴疑惑受け個人情報保護強化策を検討

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EUが米国との「セーフハーバー協定」の見直しに着手、NSAの盗聴疑惑受け個人情報保護強化策を検討

 欧州委員会のレディング副委員長(司法・基本権・市民権担当)は19日、米国家安全保障局(NSA)によるEUや加盟国の政府機関などへの盗聴疑惑を受け、新たな個人情報保護強化策を検討する方針を明らかにした。すでに個人データの移転に関するEU・米国間の取り決めである「セーフハーバー協定」の見直しに着手しており、年内に結論をまとめるとしている。欧州議会や大部分の加盟国はテロ対策を理由とする同盟国への盗聴行為を容認することはできないとの認識を共有しており、米中央情報局(CIA)元職員による機密暴露をきかっけに、EUでは個人情報保護指令の改正に向けた議論が大きく進展する可能性がある。

 EUデータ保護指令は十分なレベルの保護措置が確保されていない第3国へのデータ移転を禁じているが、米国にはデータ保護指令に相当する包括的な個人情報保護ルールが存在しない。このため欧州委は米商務省との間でEUから米国に転送される個人データのプライバシー保護に関する基本原則を定めたセーフハーバー協定を結び、商務省が要件を満たした企業を認証している。
 
 レディング副委員長は19日に開かれた非公式司法相理事会で、米国とのセーフハーバー協定は「結局のところさほど安全とはいえず」、「EUより保護レベルが低い」米国へのデータ移転を許す「抜け道」になっている可能性があると指摘。「EUにとってプリズム(NSAの情報収集プログラム)の発覚が警鐘になった。データ保護ルールの改革がEUの答えだ」と述べた。欧州委が出す結論としては、セーフハーバー協定の廃止、適用条件の厳格化、現状維持の3通りが考えられるが、英フィナンシャル・タイムズによると、同副委員長の側近は現状維持の可能性は低いと述べており、協定の見直しが欧米対立の新たな火種になる可能性もある。

(Financial Times, July 19, 2013 他)

(庵研究員著)

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