電子書籍販売めぐり欧州委がペンギンとも和解、代理店モデルの破棄などで最終決着

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電子書籍販売めぐり欧州委がペンギンとも和解、代理店モデルの破棄などで最終決着

 欧州委員会は7月25日、電子書籍の価格設定をめぐり調査を進めていた問題で、英ピアソン・グループ傘下の大手出版社ペンギンが提示した和解案を承認したと発表した。これにより、調査対象となっていた米アップルおよび欧米の出版大手5社すべてと欧州委の間で和解が成立し、競争法違反による制裁措置は回避されたことになる。

 問題となっていたのは、アップルがタブレット型端末「iPad」の発売に合わせて電子書籍のオンライン配信サービス「iブックストア」を立ち上げた際に導入した「代理店モデル(agency model)」と呼ばれる契約スタイルと、アップルより有利な価格での販売を禁止した「most favoured customers(MFC)」と呼ばれる条項。従来は出版社が卸価格を設定し、書店が小売価格を決める「卸売りモデル(Wholesale model)」が一般的だったが、アップルとの契約では出版社が電子書籍の小売価格を設定し、売り上げの70%を出版社、30%をアップルが受け取る仕組みになっている。欧州委は代理店モデルへの移行に伴い、小売業者が人気作品の販売権を獲得するため、出版社との契約で同様のモデルを採用する動きが広がって入る点にも着目。電子書籍ストア間の競争が不当に妨げられ、販売価格の上昇を招いている疑いがあるとして、2011年12月に本格調査を開始した。

 欧州委の調査対象となった出版社は仏アシェット・リーブル、米ハーパー・コリンズ、米サイモン&シュスター、独フェアラークグルッペ・ゲオルク・フォン・ホルツブリンクとペンギンの5社。このうちペンギンを除く4社とアップルは早い段階で代理店モデルの破棄などを盛り込んだ和解案を提示し、欧州委は昨年12月に5社の提案を受け入れて競争法違反の調査を打ち切った。

 ペンギンは当初、不正行為は一切なかったとして交渉に加わらなかったが、今年4月になって欧州委に和解案を提示。欧州委は競合他社などから意見を聞く1カ月の「市場テスト」を経て、一連の措置により「電子書籍市場で公正な競争が確保される」と判断し、和解案を受け入れた。

 欧州委によると、ペンギンが提示した和解案には他の5社と同様、アップルと出版社はただちに代理店モデルを破棄する◇アップルと出版社はMFC条項を向こう5年間凍結する◇向こう2年間にわたり、小売業者が自由に電子書籍の販売価格を設定できるようにする----などが盛り込まれている。

(European Commission Press Release, July 25, 2013 他)

(庵研究員著)

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