英IPOが著作権例外規定の見直し案を公表、私的複製/引用/パロディの3項目

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英IPOが著作権例外規定の見直し案を公表、私的複製/引用/パロディの3項目

 英知的財産庁(IPO)は6月7日、一定の条件下で著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できる例外規定のうち、私的複製、引用、パロディの3項目に関する見直し案を公表した。公正な取扱い(fair dealing)を条件に、著作権を制限して著作物の円滑な利用を促すのが狙い。7月17日まで各方面から意見を受け付け、法案に反映させる。

 今回の見直し案は、英政府の諮問を受けてカーディフ大学のイアン・ハーグリーブス教授が2011年5月に公表した「知的財産と成長戦略の見直し」と題する報告書(ハーグリーブス・レビュー)を受け、IPOが昨年12月にまとめた知的財産制度の見直しに関する報告書「Moderninsing Copyright(著作権の近代化)」の内容を具体化したもの。同報告書はデジタル時代に対応して著作物のより自由な利用を可能にするため、著作権を制限する例外規定の適用対象を拡大(ただし、領域によっては縮小)する方針を打ち出していた。IPOはこれに沿って教育や研究における利用など、他の項目についても現行ルールの改定作業を進めており、順次見直し案を公表して意見募集を行う方針を示している。

 著作物の私的複製に関しては、インターネット上における著作権侵害に対応するため、すでに保有しているか、合法的に入手した著作物に対象を限定したうえで、私的使用を目的とする他の媒体や機器への複製(フォーマット変換)を認めることを提案している。すでに多くの消費者が合法的に購入したCDの音楽をパソコンやiPodなどの携帯プレイヤーにコピーするといった私的複製を行っている現状を踏まえ、「大多数が正当と考える行為にルールを適合させる」必要があると判断した。ハーグリーブス・レビューは、コンテンツ産業の成長を促すためにも実態に合わせて著作権法を改正し、フォーマット変換を認めるべきだと指摘しており、IPOもModerninsing Copyrightの中でこれを支持していた。

 一方、引用に関する現行規定は、すでに公開されている著作物を「評価および検証」の目的で利用する場合は、公正な慣行を遵守することや、正当な範囲で行われることを条件として、権利者の許諾を得ずに引用することができると定めている。IPOはこれに対し、正当な目的による著作物の引用を不当に制限することは、著作物の公正で円滑な利用を妨げることになると指摘。報道記事や学術論文などの引用を念頭に、「たとえば評価や検証だが、これに限らず正当な目的で」という文言に変更することを提案している。

 さらにIPOはパロディーを目的とする作品の使用にも著作権の例外規定を適用し、著作権者の許諾を得ずに適正な範囲で他人の作品を引用できる仕組みを導入することを提案している。風刺マンガや替え歌なども対象に含まれる。IPOは新たにパロディーに関する著作権の例外規定を設けることで、クリエイティブ産業の活性化につながると説明している。

(IPO Press Release, June 7, 2013 他)

(庵研究員著)

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