英デジタル経済法はEU法に抵触の可能性、大手ISPが高等法院に申立て

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英デジタル経済法はEU法に抵触の可能性、大手ISPが高等法院に申立て

 英大手インターネット接続業者(ISP)のBTとTalkTalkは6日、英国で今年4月に成立した「デジタル経済法(Digital Economy Act)」が個人情報保護や単一市場の原則などを定めたEUルールに抵触する可能性があるとして、高等法院に法的観点からの精査を求める申立書を提出した。両社は同法が5月6日の総選挙を控え、議会の解散前に法案を処理するための「総仕上げ(wash-up)」と呼ばれる特別な承認プロセスを経て成立した点も問題視しており、EU法との整合性が認定されない限り、ISPに義務付けられた技術的措置を実行するために必要な投資を凍結する方針を示している。

 デジタル経済法は英政府が掲げる情報通信技術(ICT)分野の戦略ビジョン「デジタル・ブリテン(Digital Britain)」を推進するための法的枠組みとして策定されたもので、違法ダウンロード対策のほかに通信・メディア監督機関Ofcomの役割、ラジオ放送のデジタル移行、ブロードバンドの普及対策など幅広い分野をカバーしている。最大の焦点だったネット上の著作権侵害対策に関しては、ISPに
◆著作権者からの報告に基づき、違法ダウンロードを行ったユーザーに警告書を送る
◆著作権者に違法ダウンロードを行ったユーザーを匿名化した「著作権侵害リスト」を提供する
◆違反者に対する警告後も改善がみられない場合、Ofcomの判断に基づいて違反ユーザーに回線の接続速度や帯域の制限、アカウントの一時停止などの技術的措置による制限を加える
----などを義務付けている。

 BTとTalkTalkは声明で「両社はデジタル経済法がISPに課した役割について、EU法と国内法のバランス、通信分野におけるユーザーの個人情報保護、単一市場の原則などを定めたEUルールに抵触するとの懸念を共有している。現時点でデジタル経済法の合法性が明確に認定されないのであれば、BTやTalkTalk、その他のISPによる新たなシステムへの巨額投資はまったく無駄になる可能性がある」と主張。高等法院に対し、EUルールに基づいて制定された既存の国内法とデジタル経済法の整合性について精査するよう求めている。

(OUT-LAW News, July 8, 2010 他)

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