欧州デジタル図書館の「蔵書」が倍増、著作権ルールが計画推進の壁に

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欧州デジタル図書館の「蔵書」が倍増、著作権ルールが計画推進の壁に

 欧州委員会は8月28日、情報通信技術を利用して欧州各国の多様な文化的資源を広く公開することを目的とする「欧州デジタル図書館」計画の進捗状況に関する報告書を公表した。2008年11月に運用がスタートしたデジタル図書館の多言語対応ウェブサイト「Europeana.eu」に登録された書籍、視聴覚作品、写真、公文書などは当初の200万点から460万点に増加したものの、同サイトを通じて閲覧できる書籍はEU各国でデジタル化された書籍全体の5%にとどまっている。欧州委は2010年末までにデジタルコンテンツの登録数を1,000万点に増やすという目標を打ち出したうえで、著作権保護ルールの見直しを含め、書籍のデジタル化を進めるうえでの問題点や課題について公開協議を開始した。

 現行の著作権制度によると、デジタル化された書籍などの資料は著作権保護期間が満了してパブリックドメインとなった作品か、権利者による事前の明示的な合意がある場合以外はオンラインで公共の利用に付すことができない。このため、EUのデジタル図書館に登録されているコンテンツはパブリックドメインの作品がほとんどで、保護期間内だが絶版になっている作品(欧州各国の国立図書館の蔵書全体のおよそ90%)や、権利者を特定できない孤児作品(保護期間内の作品のおよそ10−20%)は対象から除外されている。こうしたパブリックドメイン以外の作品をオンラインで公開するには、EUレベルで著作権法の枠組みやライセンス契約の条件を抜本的に見直す必要がある。

 こうした現状を踏まえ、欧州委は書籍のデジタル化を進める上でのさまざまな問題や課題について検討するため、同日から意見募集を開始した。11月15日までの期間、著作権保護期間内の作品の取り扱い、絶版になっている作品や孤児作品をEUレベルで一括管理するシステムの是非、長期的な財源確保に向けた官民協力の可能性などについて各方面から意見を受け付ける。

 欧州委のレディング委員(情報社会・メディア担当)は声明で「書籍のデジタル化は極めて困難な作業だが、さまざまな文化的資源を広く公開するための有効な手段といえる。ただ、Europeanaからアクセスできる作品はデジタル化された書籍のごく一部にすぎず、さらに登録されたコンテンツの約半分は1カ国から提供されたもので、他の加盟国の貢献度は低いと言わざるを得ない」と指摘。「EU全体で書籍のデジタル化を推進するため、デジタル時代に対応した著作権保護の枠組みづくりを進める必要がある」と述べた。

 09年7月末時点の統計によると、加盟国がデジタル図書館に提供したコンテンツの件数はフランスが全体の47%を占め、ドイツ(15.4%)、オランダ(8%)、英国(7.9%)、スウェーデン(5.2%)と続いている。

(European Commission Press Release, August 28, 2009)

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