斜めから見る実演家の著作隣接権

棚野正士備忘録

棚野正士(IT企業法務研究所代表主任研究員)

(注:このメモは2007年9月、著作隣接権団体の内部勉強会に招かれたとき作成したレジュメである。「実演家の著作隣接権」を考える場合の視点をどこに置くかの一つの参考として掲出する。08.1.8記)

1.著作隣接権の生成

1−1 ローマ条約成立(1961)(参考文献:CRIC発行大山幸房訳WIPO「隣接権条約・レコード条約解説」:同書9ページ“国際文芸美術協会(ALAI)が1903年にワイマールで開催した総会において、ソロの実演家の苦境に同情を示したことである。”)。 1−2 国内法成立(1970)(必携資料:CRIC発行「著作権関係法令集」=著作権法、著作権法施行令、著作権等管理事業法、各種条約、各団体使用料規程、文化芸術振興基本法他収録)。 1−3 WPPT成立(1996)(参考文献:CRIC発行「WIPOが管理する著作権及び隣接権条約の解説並びに著作権及び隣接権用語解説」)。

2.著作権法における著作権と著作隣接権

2−1 旧著作権法における「演奏歌唱」(桃中軒雲右衛門事件) 2−2 現行著作権法における実演家の権利(著作隣接権における実演家の権利の位置づけ:加戸守行「著作権法逐条講義」四訂新版557ページ“実演を公衆に伝達するもっとも有力な媒体としての性質上、実演家の利益を実質的に確保する手段として放送事業者に権利を認めるという発想が強い”)。

3.実演家はどのように権利を獲得したか

3−1 国内における問題提起と運動(芸団協の設立、芸団協・JASRAC・レコード協会の連携)。 3−2 国際的運動(FIM、FIAとの連携)。

4.実演家の権利

4−1 実演家とは(特に、自然人と法人)。 4−2 権利の内容(人格権と経済的権利)(特に、複製権と録音・録画権)。 4−3 権利の性格(特に、許諾権と報酬請求権、そして権利と契約)。 4−4 権利の行使(文化庁指定団体業務、報酬請求権に基づく基本協定、許諾権に基づく集中処理)。

5.問題あれこれ

5−1 “機械的失業”という古い下着(商業用レコードの二次使用)。 5−2 “テレビ番組の部分利用”の法的根拠(テレビ番組の目的外使用)。 5−3 “私的録音録画補償金”検討の問題点。 5−4 “ワンチャンス主義”というゆうれい。 5−5 著作権法で大切な条文:第63条(著作物の利用の許諾)(第103条で実演家に準用)。

6.権利の団体的管理(CPRA)の設立

6−1 CPRAの着想(権利者のものは権利者の下へ)。 6−2 CPRAの組織的構造(CPRAは専門医による独立的専門病院)。 6−3 CPRAの視点(組織から権利者へ)。 6−4 組織と権利者(大切なのはどっちか)。 6−5 独立性、専門性、透明性(CPRAの基本的性格)。

7.実演家の喉に刺さった40年の小骨(解決しなければならない緊急の課題)

7−1 WIPO視聴覚実演に関する実演家保護条約の作成(国際秩序の形成)。 7−2 40年間の実演家の想い(国内法の改正)。 7−3 権利の集中管理システムの構築とデータベースづくり(基盤整備)。

8.一日では森は造れない

8−1 誰かがやってくれるわけではない。 8−2 自ら汗を流すしかない。 8−3 森の樹が育つには二世代かかる。 8−4 事例(1)ローマ条約加入。 8−5 事例(2)私的録音録音録画補償金。 8−6 事例(3)実演家の人格権。 8−7 考えなくてよいのか“プロダクションの権利”。

9.ついでに

9−1 外の風の流れを知る、窓を開けて風を入れる。 9−2 他者を知る(他団体、所管庁、立法府、学識経験者等との交流)。 9−3 “敵”とたたかい、その上で“信頼関係”を構築する(対立の構造から協調の関係へ=トライアンギュレーション)。 9−4 どこで腕を磨くか(例えばCRIC)。 9−5 情報の蓄積と整理。

以上

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