欧州議会が通信規制改革案を可決、携帯ローミング廃止とネット中立性原則が柱

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欧州議会が通信規制改革案を可決、携帯ローミング廃止とネット中立性原則が柱

 欧州議会は4月3日の本会議で、通信分野における単一市場の創設を目的とした通信規制改革案を賛成多数で可決した。事業者間の公正な競争を促進し、消費者に低価格で質の高いサービスを提供するのが規制改革の狙いで、EU域内の他の国で携帯電話を使用する際のローミング(相互接続)にかかる上乗せ料金の廃止や、「ネットワーク中立性」の原則などが法案に盛り込まれている。EU加盟国の承認を経て新ルールが導入される。

 法案によると、携帯電話事業者は2015年12月15日までに、域内の他の国で携帯電話を使用する際の国際ローミングにかかる上乗せ料金を廃止しなければならない。欧州委員会が昨年9月に打ち出した原案では同措置の期限が16年末となっていたが、欧州議会では1年前倒しする修正案が承認された。

 欧州委は域内のどこにいても国内と同じ料金でサービスを利用できるようになれば、携帯電話の利用者が今後さらに増加すると説明しているが、携帯電話事業者は重要な収益源を失うことになるため、業界団体などが反発を強めている。ドイツテレコムやスペインのテレフォニカなどが加盟する業界団体ETNOは、ローミング料金の厳格な規制によって収益が圧迫されることで、将来の投資計画に深刻な影響が及ぶと警告。さらにアナリストの間では、国際ローミングの上乗せ廃止が業界全体で5%前後の収益悪化につながるとの見方も出ている。

 一方、携帯ローミングと並んで最大の焦点だったネット中立性原則が法制化され、インターネット接続事業者(ISP)が自社と競合するサービスなどに対し、意図的に通信速度を遅くしたり、データ通信量を制限したり、不当に高い通信料金を請求するなどの差別的行為が禁止される。これはスマートフォンの急速な普及などを背景に、ネット上のトラフィックがひっ迫するなか、大手通信会社がIP電話の「スカイプ」やグループチャットサービス「WhatsApp」などの利用を制限している実態が明らかになったことを受けた措置。米国では動画配信サービスのネットフリックスがケーブルテレビ最大手コムキャストと結んだ契約のように、資金力のあるコンテンツプロバイダーが優先的に高速接続を確保する見返りとして、トラフィックの増大に伴う追加的な費用負担に応じる動きが広がりつつあるが、EUでは新ルールの導入により、ISPはすべてのトラフィックを平等に扱うことが義務付けられる。

 法案にはこのほか、携帯電話やブロードバンド接続サービスの契約における顧客保護の強化や、第4/第5世代移動通信システムへの投資促進を目的としたEUレベルでの周波数管理などが盛り込まれている。

(European Parliament Press Release, 2014/4/3 他)

(庵研究員)

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