欧州議会がEUの文化・芸術助成プログラム「クリエイティブ・ヨーロッパ」承認、向こう7年間に14.6億ユーロを投じて国際展開を奨励

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欧州議会がEUの文化・芸術助成プログラム「クリエイティブ・ヨーロッパ」承認、向こう7年間に14.6億ユーロを投じて国際展開を奨励

 欧州議会は11月19日の本会議で、文化・クリエイティブ産業の振興を目的とするEUの文化助成プログラム「クリエイティブ・ヨーロッパ」を承認した。2014−20年の7年間に総額14億6,000万ユーロの予算を投じて映画、演劇、舞踊、音楽、テレビ、美術、出版など幅広い分野の文化・芸術活動を支援する。プログラムを策定した欧州委員会は、さまざまなプロジェクトへの助成を通じて少なくとも25万人のアーティストが資金面などで恩恵を受けることができると説明している。

 クリエイティブ・ヨーロッパはEUが実施している既存の文化・芸術分野の支援策を統合したもので、単一の枠組みを構築することでより効率的にプログラムを運営するのが狙い。映画を中心としたオーディオビジュアル産業の振興を目的とする助成プログラム「MEDIA(Mesures pour encourager le developpement del’industrie audiovisuelleの頭文字を取ったもの)」、舞台芸術や視覚芸術などを対象とする支援プログラム「Culture」、欧州映画の配給・配信など、オーディオビジュアル作品の国際展開をサポートする「MEDIA Mundus」がクリエイティブ・ヨーロッパの土台となる。さらに文化・芸術イベントを企画・運営する中小の事業者が金融機関から融資を受けやすくするため、2016年に債務保証制度を創設して文化事業への資金調達を支援する。

 クリエイティブ・ヨーロッパに充てられるEU予算はこれまでの実績に基づき、56%がMEDIA(MEDIA Mundusを含む)プログラム、31%がCultureプログラムに配分される。残り13%はEU加盟国の窓口となる「クリエイティブ・ヨーロッパ・デスク」の運営、分野をまたいだ実験的プロジェクトへの支援、新たなビジネスモデルの開発などに充てられる。

 具体的にはクリエイティブ・ヨーロッパを通じて以下のような支援が行われる:
・質の高い欧州映画を世界に向けて発信するため、800本以上の作品を対象に劇場公開やデジタル配信を含めて国際市場での配給を支援する。
・上映作品の半数以上が欧州の映画であることを条件に、域内全体で2,000以上の映画館に資金援助を行う。
・4,500冊以上の書籍を対象に翻訳のための資金援助を行い、欧州の作家が国際市場に進出するのを後押しする。
・オーディオビジュアル分野における技術の進歩とそれに伴うビジネス環境の変化に対応するため、技術者やプロモーターの研修などをサポートして国際展開を奨励する。

 EUでは800万人以上が文化・クリエイティブ産業に従事しており、業界全体の市場規模は域内総生産のおよそ4.5%に相当する。クリエイティブ・ヨーロッパは欧州の文化・芸術関連産業がグローバル化とデジタル化によって生まれた新たなビジネスチャンスを獲得し、欧州経済の成長に貢献するのを手助けする。

 クリエイティブ・ヨーロッパはEU加盟国による閣僚理事会の承認を経て2014年1月
の始動が見込まれる。

(European Commission Press Release, November 19, 2013)

(庵研究員著)

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