アップルが自動CM置換技術で特許取得、開発中のスマートテレビ「iTV」の秘密兵器に?

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アップルが自動CM置換技術で特許取得、開発中のスマートテレビ「iTV」の秘密兵器に?

米アップルの生みの親である故スティーブ・ジョブズ氏の最後の夢は、携帯音楽プレーヤー、オンライン音楽配信、スマートフォン、タブレット端末と同様、同社がテレビ事業でも世界のトップに立つことだった。アップルは徹底した秘密主義を貫いているため、同社が年内にも投入するとみられるスマートテレビ「Apple iTV」(仮称)に関する噂や暗示には事欠かないが、少なくともこれまでのところ、アップルがテレビ市場で支配的な地位を確立するための切り札を持ち合わせているようにはみえなかった。

 下半期に入っても依然としてiTVをめぐるさまざまな観測が飛び交うなか、アップルはこのほど、放送コンテンツに組み込まれたコマーシャルをスキップし、自動でオーディエンスの好みに合った媒体の再生に切り替える技術の特許を取得した。ライブ放送中のCM置換が可能なテレビ受像機をアップルが単独で投入することができれば、この特許技術は同社がスマートテレビ市場で主導権を握るための「秘密兵器」になる可能性がある。

 アップルが取得した米国特許第8,249,497号:「ラジオとローカルメディアのシームレスな切り替え(Seamless switching between radio and local media)」は、「ラジオ放送などのメディア放送と、ローカルメディアのライブラリにある媒体の再生をシームレスに切り替えるシステムおよび方法」に関するもの。具体的には「これから放送される内容がユーザーの興味や関心に合ったものではないと視聴機器が判断すると」、視聴機器のローカル環境に保存されているコンテンツに切り替える仕組みで、ユーザーの興味を引かないコーナーが終了すると、自動的にもとの放送に戻ると説明されている。

 置き換えられるローカル保存メディアの選択に関しては、聴取/視聴中の番組で放送されたコンテンツに合わせることなどで、オーディエンスが感じる違和感を軽減することができるという。一方、放送中のコンテンツを識別する方法としては、番組表や放送スケジュールなどのメタデータを利用したり、音声信号を解析するなどの手法が想定されている。

 たとえば米国で急成長しているインターネットラジオ「パンドラ」では、無料ユーザー向けの放送にはCMが挿入されているが、アップルの技術を導入することで、CMの代わりにユーザーの好みに合った楽曲を流すといったことが可能になる。さらにCMだけでなく、リスナーにとって興味のないトークや嫌いな楽曲など、特定の番組コーナーも自動置換の対象となる。

 今回取得した特許技術を応用することで、開発中のApple iTVに予めCMを判別し、CMが流れるタイミングでスマートフォンやタブレット端末に保存されている楽曲などに自動的に切り替える機能を搭載することが可能になった。ただし、CMスキップ機能によって放送内容が変更されることに対し、テレビネットワークなどは以前から「著作権侵害にあたる」として強く非難している。このためアップルが実際にスマートテレビ市場で主導権を握るには、いかにしてディズニーやコムキャストといった巨大メディアグループと折り合いをつけるかが鍵になる。

(Forbes, August 22, 2012 他)

(庵研究員著)

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