フランスで絶版書籍のデジタル利用に関する法律公布、政府主導で有償提供を促進

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フランスで絶版書籍のデジタル利用に関する法律公布、政府主導で有償提供を促進

フランスで3月1日、20世紀に出版された絶版書籍のデジタル利用を促進するための法律「Loi relative a l'exploitation numerique des livres indisponibles du XXe siecle」が公布された。

 新法が適用されるのは2001年1月1日より前にフランス国内で出版された著作権保護期間内の作品のうち、商業的に入手不可能で、現時点で紙媒体でもデジタルフォーマットでも出版されていない書籍。これらの書籍はすべて仏国立図書館(BNF)のデータベースに登録され、登録日から6カ月以内に権利者から異議申立てがなかった場合、文化省の認可を受けた著作権管理団体が出版社に非排他的ライセンスを供与する仕組み。使用を許諾された出版社はその後5年間にわたり(継続可能)、当該書籍をデジタル化して販売することができる。

 著作者や紙媒体の複製権を保有する出版社から異議申立てがあった場合はBNFのデータベースに記録され、異議を申し立てた出版社は2年以内に当該書籍を市場に流通させる義務を負う。絶版書籍が再び流通することで名誉や評判が損なわれるおそれがある場合に限り、著作者はBNFが管理するデータベースへの登録から6カ月以上が経過した場合でも異議を申立てることができる。

 一方、紙媒体の複製権が最初に許諾されてから10年以内に権利者を特定できない場合、著作権管理団体は図書館に対し、当該書籍をデジタル化して無償で公開する権限を与えなければならない。ただし、デジタル化事業を通じて図書館が商業的利益を受けないことが条件となる。

 仏政府は昨年2月、BNF、出版社組合、文学者協会と絶版書籍のデジタル利用に関する計画案で合意。20世紀に出版された絶版書籍を5年以内にすべてデジタル化し、有償で提供する仕組みを整備する方針を打ち出した。しかし、現行の知的所有権法の枠組みでは、すべての作品について権利者を特定し、デジタル利用の許可を得る必要がある。このため、計画の実現に向けて新たな法律の策定が進められ、今年2月に議会で新法が可決された。

(The Library of Congress, March 26, 2012 他)

(庵研究員著)

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