英デジタル経済法はEU指令に合致、英高等法院がISP側の訴え棄却

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英デジタル経済法はEU指令に合致、英高等法院がISP側の訴え棄却

 英国で昨年4月に成立した「デジタル経済法(Digital Economy Act)」をめぐり、英大手インターネット接続業者(ISP)のBTとTalkTalkが個人情報保護に関する基本原則を定めたEU法との整合性について精査を求めていた問題で、英高等法院は4月20日、デジタル経済法はEU指令に合致しているとの判断を下した。

 デジタル経済法は英政府が掲げる情報通信技術(ICT)分野の戦略ビジョン「デジタル・ブリテン(Digital Britain)」を推進するための法的枠組みとして策定されたもので、違法ダウンロード対策のほかに通信・メディア監督機関Ofcomの役割と権限、ラジオ放送のデジタル移行、ブロードバンドの普及促進策など幅広い分野をカバーしている。

 最大の焦点だったネット上の著作権侵害対策に関しては、ISPに対し
◆著作権者からの報告に基づき、違法ダウンロードを行ったユーザーに警告書を送る
◆著作権者の求めに応じ、違法ダウンロードを行ったユーザーを匿名化した「著作権侵害
リスト」を提供する
◆違反者に対する警告後も改善がみられない場合、Ofcomの判断に基づいて違反ユーザーに回線の接続速度や帯域の制限、アカウントの一時停止などの技術的措置による制限を加える
----などを義務付ける内容になっている。

 BTとTalkTalkはデジタル経済法がインターネットユーザーによる著作権侵害行為の責任をISPに負わせる点を問題視し、違反ユーザーに警告書を送るなどの措置にかかる費用を負担しなければならない点についても反発を強めている。両社は昨年7月、デジタル経済法が通信分野における個人情報保護の基本原則を定めたEUのデータ保護指令に抵触すると主張し、高等法院に法的観点からの検証を求める申立書を提出。EU法との整合性が認定されない限り、同法が規定する技術的措置を実行するために必要な投資を凍結する方針を示していた。

 高等法院のパーカー判事は判決で「著作権者とインターネットユーザー双方の立場からみて、デジタル経済法は現行規制に比べ、より効果的で焦点が絞られた公正なシステムといえる」と指摘。違反行為を犯したユーザーを特定する目的でIPアドレスから収集されたデータは個人情報だが、著作権侵害行為を是正するために著作権者がこうしたデータを利用することは容認されるとの考えを示し、デジタル経済法が個人情報保護の取り扱いを定めたEUデータ保護指令に抵触するとのISP側の主張を退けた。

 パーカー判事は一方、デジタル経済法がISPに求める一連の措置にかかるコストに関連して、Ofcomが新たに設ける異議申立の処理機関の設立費用や運用コストをISPに負担させることは法的根拠に欠けると指摘。そのうえで、違反ユーザーに対する警告書の送付にかかる費用に関しては、ISPがコストの4分の1を負担し、残りを著作権者に負担させるべきだとの考えを示した。

 TalkTalkは判決を不服として欧州司法裁判所に判断を求める方針を示している。

(OUT-LAW News, April 21, 2011)

(庵研究員著)

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