ハンガリーの「メディア法」めぐりEU内で摩擦、欧州議会では即時撤回を求める声も

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ハンガリーの「メディア法」めぐりEU内で摩擦、欧州議会では即時撤回を求める声も

 報道監視を強化するハンガリーの「メディア法」をめぐり、EU内で報道の自由を制限するものだとの批判が高まっている。1月19日に開かれた欧州議会本会議では、EU議長国としての政策方針を示すために出席した同国のオルバン首相に対し、一部の議員が「検閲済み」と書いたプラカードを掲げて抗議するなど、法律の即時撤回を求める意見が相次いだ。欧州委員会もメディア法が報道や表現の自由を定めたEU法に抵触する可能性があると警告している。これに対し、オルバン首相は必要に応じて法律を修正する用意があるとしながらも、EUによる内政干渉だと反発を強めている。

メディア法は議会で多数派を占める中道右派与党フィデス・ハンガリー市民同盟の後押しで昨年12月に成立し、今年に入り施行された。これによると、新設のメディア監督機関「国家メディア通信庁(NMHH)」が新聞、テレビ、インターネットなど各種メディアの報道内容を監視し、公共の利益に反したり、政治的に中立でないと判断された場合、最大2億フォリント(約8,000万円)の罰金が科される。
また、NMHHは国の安全保障に関わる報道について、記者に情報源の開示を求める権限を持つ。

政府は技術の進歩によって形骸化した既存ルールを実情に合わせるのが新法の目的と説明しているが、報道が「バランスを欠いた」内容かどうかを判断するための基準が明記されていないうえ、NMHHのメンバー5人は全員が与党フィデスの関係者とされ、実際には同党やオルバン政権に批判的な報道が規制される恐れがある。

欧州委のバローゾ委員長は本会議に先立って行った演説で、「ハンガリーのメディア法に重大な懸念を抱いている」と発言。近く同国に書簡を送り、詳しい説明を求める方針を明らかにした。また、欧州議会で中道左派グループの代表を務めるシュルツ議員は「ハンガリーのメディア法はEUの基本理念である自由と正義を順守していない」と指摘。オルバン首相に対し、ただちに法律を撤回するよう求めた。

これに対し、同首相は「我々は40年間にわたり独裁体制の下で生きてきた。
民主主義に対するハンガリー国民の切実な思いを疑問視するような意見を受け入れることはできない」と反論。必要があればメディア法を見直す用意はあるが、あくまでも国内の問題だと強調し、EUの干渉をけん制した。

(Financial Times, January 19, 2011 他)

(庵研究員著)

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