欧州特許庁、ヒトES細胞に関する発明の特許出願を拒絶

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 欧州特許庁(EPO)拡大審判部(EBoA)は11月27日、米ウィスコンシン大学の知財管理団体Wisconsin Alumni Research Foundation(WARF)が出願した胚性幹細胞(ES細胞)に関する発明は特許要件を満たしていないとする審決を下した。
 争点となっていたのはWARFが1995年に出願した「ヒトを含む霊長類からES細胞を取り出す方法」に関する特許。EPO審査部は2004年、当該技術はヒト胚の工業または商業利用を目的とする発明への特許を禁止した欧州特許条約(EPC)および欧州連合(EU)の「バイオテクノロジー発明に関する指令」の規定に反するとして、特許出願を拒絶した。WARF側は査定を不服として不服審判を請求。EPO技術審判部は2006年、同案件をめぐる法的問題を明らかにする必要があるとして、EBoAに判断を委ねていた。
 EBoAはEPCおよびEUバイオ指令に基づき、「必然的にヒト胚細胞の使用や破壊を伴う発明に特許を認めることはできない」として、特許出願を拒絶したEPO審査部の判断を支持。そのうえで、本案件ではヒト胚の破壊を必須のプロセスとして伴う点が拒絶の理由になったと説明し、「今回の審決はヒトES細胞の特許性に関する問題全般に対する判断を示したものではない」と強調している。
 EPCは商業的利用が公序良俗や倫理に反するとみなされる発明への特許を禁じており(第53条 a)、該当するバイオテクノロジー分野の発明項目として「工業または商業目的でのヒト胚の使用」を挙げている(第28規則 c)。ES細胞に関する研究を
めぐっては、倫理面から根強い反発がある一方で、パーキンソン病や糖尿病などの病気やけがで傷んだ組織を治す再生医療への応用が期待されている。

(European Patent Office Press Release, November 27, 2008 他)

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