音楽著作権管理団体の「相互管理契約」、欧州委が地理的制限条項などの排除を命令

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 欧州委員会は16日、欧州の音楽著作権管理団体が二国間で結んでいる「相互管理契約」の一部条項がEU競争法に違反するとして、域内の24団体に対し競争制限的な条項を排除するよう命じた。各団体は90日以内に、自国以外の放送事業者やコンテンツ配信事業者に著作物の使用許諾を与えることを禁じる条項などを契約から排除しなければならない。ただ、欧州委は今回、競争法違反と認定した24団体および各団体が加盟する著作権協会国際連合(CISAC)に対して制裁金は科していない。
 欧州委が問題視しているのはインターネット、ケーブル、衛星を介して国境を越えて音楽コンテンツを送配信する際の著作権管理の仕組み。現在は各国の著作権管理団体が国ごとに著作物の使用許諾を行い、著作権使用料を徴収しているため、複数
市場で音楽コンテンツの送配信を行う場合、事業者はサービスを提供するすべての国でそれぞれライセンスを取得しなければならない。各国の管理団体は相互に著作物の使用を許諾する相互管理契約を結んで音楽作品の著作権を管理しているが、欧州委はこの中の特定の条項が各国で市場独占を形成する要因になっていると結論づけた。
 相互管理契約の中で欧州委が競争制限的行為(EC条約第81条)にあたると判断したのは
◇各国の著作権管理団体は自国以外の放送事業者やコンテンツ配信事業者に著作物の
使用許諾を与えることはできず、許諾の効力は国内に限定される(地理的制限)
◇作詞家、作曲家、音楽出版者が自国以外の管理団体と著作権の信託契約を結ぶことは
できず、途中で信託先を変更することもできない(会員に対する制限)
----という2つの条項。
欧州委はこれらの条項を排除することで、作詞家や作曲家は業務の効率などを基に著作権管理団体を自由に選ぶことができ、一方、放送事業者やコンテンツ配信事業者は、1カ国でライセンスを取得すれば域内全域で事業展開できるようになると説明している。
 欧州委はドイツの民放最大手RTLと英国の音楽配信事業者ミュージック・チョイスからの苦情を受け、6年ほど前からCISACの協定に基づく相互管理契約ついて調査を進めていた。
同委は2006年2月、CISACとCISACに加盟する欧州各国の管理団体に対し、相互管理契約の一部条項がEU競争法に違反するとして異議告知書を送付。CISACと会員団体はこれを受けて問題とされた条項を排除する方針を表明したが、その後の調査でほとんど改善がみられなかったため、今回の決定に踏み切った。欧州委のクルース委員(競争政策担当)は「(競争原理の導入によって)著作権管理団体は作詞家や作曲家により良い条件を提示することになり、文化的多様性の面でもメリットがある」と強調。また結果的にインターネット、ケーブル、衛星を通じた放送サービスが拡充されて消費者の選択肢が広がり、著作権者にとっては新たに収入を得る機会が増えることになると指摘している。

(European Commission Press Release, July 16, 2008 他)

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