ファイル共有ソフトによる著作権侵害、ISPに個人情報提供義務なし

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 欧州司法裁判所(ECJ)は1月29日、民事手続きにおいてレコード会社や映画会社などがインターネット接続業者(ISP)に対し、ファイル共有ソフトのユーザーに関する個人情報の提供を要求することはできないとする判決を言い渡した。
 今回の事案は、レコード会社や音楽出版社などが加盟するスペインの業界団体Promusicaeが同国の通信大手テレフォニカに対し、ファイル共有ソフト「KaZaA」を利用してPromusicaeの会員が著作権を保有する楽曲を無断でダウンロードしたユーザーの氏名や住所などの情報提供を求めたのが発端。テレフォニカはスペインの法律では犯罪捜査や国の安全保障に関わる場合に限り、加入者に関する個人情報の提供が義務付けられているとしてPromusicaeの要求を拒否。Promusicae側の提訴を受けてスペインの裁判所がECJに判断を求めていた。
 ECJは判決で「本件訴訟はプライバシーの保護と著作権保護という2つの基本的な権利の間で、どのように折り合いをつけるべきかという問題を提起した」と指摘。EUは著作権の効果的な保護を目的としたいくつかのルールを定めているが、「現行法は著作権保護のために民事訴訟において個人情報の提供を義務付けることを加盟国に要求していない」と結論づけた。ECJはそのうえで、今回の判決は「加盟国が民事手続きにおいて個人情報の提供を義務付けるルールを導入する可能性を排除するものではない」と説明。EU指令を国内法に置き換える際、競合する権利の「適正なバランス」を取る必要があるとの認識を示した。

(Reuters, January 29, 2007 他)

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