電子書籍販売めぐる競争法違反調査、アップルと出版4社が欧州委に和解案提示

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電子書籍販売めぐる競争法違反調査、アップルと出版4社が欧州委に和解案提示

 米アップルと欧米の出版大手5社が結んだ電子書籍の販売契約がEU競争法に違反する疑いがあるとして、欧州委員会が調査を進めている問題で、欧州委は19日、アップルと出版4社から制裁を回避するための和解案が提示されたことを明らかにした。現行の契約形態を見直し、書店やアマゾンなどの小売業者が向こう2年間にわたり、電子書籍の価格を自由に設定できるようにすることなどを柱とする内容。欧州委は今後1カ月にわたって各方面から意見募集を行い、反論がなければ和解案を承認してアップルなどに対する調査を打ち切る。

 欧州委が問題にしているのは、アップルがタブレット型端末「iPad」の発売に合わせて電子書籍のオンライン配信サービス「iブックストア」を立ち上げた際に導入した「エージェンシー・モデル」と呼ばれる契約スタイル。従来は出版社が卸価格を設定し、書店が小売価格を決める「ホールセール・モデル」が一般的だったが、アップルとの契約では出版社が電子書籍の小売価格を自由に設定し、売り上げの70%を出版社、30%をアップルが受け取る仕組みになっている。
エージェンシー・モデルでは小売業者に価格決定権はないが、人気作品の販売権を得るため出版社との契約で同様のモデルを採用する動きが広がっており、欧州委は電子書籍ストア間の競争が不当に妨げられているとの見方を強めている。

 競争法違反の調査対象になっている出版社は仏アシェット・リーブル、米ハーパー・コリンズ、米サイモン&シュスター、独フェアラークグルッペ・ゲオルク・フォン・ホルツブリンク、英ペンギンの5社。欧州委は昨年3月に電子書籍事業を展開する企業への立ち入り調査を実施するなど予備調査を進めた結果、アップルと5社の取り決めがカルテルや制限的商慣行を禁止したEU競争法に抵触するとの疑いを強め、昨年12月に本格調査を開始した。

 今回、欧州委に和解案を提示したのはペンギンを除く出版4社とアップル。5社は問題となっているエージェンシー・モデルを見直し、向こう2年間にわたり電子書籍の小売業者が自由に価格を設定または変更できるようにすることを提案している。
これにより、アマゾンなどは割引価格で電子書籍を販売できるようになる。このほか出版社と小売業者の契約に関して、アップルが設定した価格より有利な条件で電子書籍を販売することを禁止する条項を5年間凍結することも和解案に盛り込まれている。

 電子書籍の販売契約をめぐっては、アップルと出版5社が価格設定で談合を図ったとして、米司法省が4月にニューヨーク地裁に訴訟を提起。このうちサイモン&シュスター、アシェット・リーブル、ハーパー・コリンズは司法省が提示した和解案に合意しており、すでにアマゾンなどでは3社の電子書籍が割引価格で販売されている。

(Reuters, September 19, 2012)

(庵研究員著)


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