米議会が著作権侵害防止法案の採決延期、ネット業界の反発で修正必至

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米議会が著作権侵害防止法案の採決延期、ネット業界の反発で修正必至

 米議会上院は20日、オンライン上の著作権侵害行為を防止する法案の採決を延期する方針を明らかにした。当初は24日に採決が行われる予定だったが、インターネット業界は「言論の自由が制限される」などと主張して強く反発。オバマ政権も過剰規制につながる恐れがあるとの懸念を表明しており、世論も不支持に傾いている。法案の修正は避けられないとの見方が広がるなか、同様の法案が提出されている下院も同日、審議を遅らせる方針を決めた。

 問題となっているのは下院で審議中の「オンライン海賊行為防止法(SOPA)」と、上院の「知的財産保護法(PIPA)」。いずれも国外のサイトを介した著作権侵害の防止に主眼を置いた内容で、海賊版の映画や音楽などの違法コンテンツを配信する外国サイトへのアクセスを遮断する条項などが盛り込まれている。

 海賊版の横行で深刻な被害を受けている映画業界などが法案を支持する一方、ネット業界は検閲強化につながり、ビジネスの革新や雇用に影響が及ぶとして反発を強めている。今月18日にはオンライン百科事典「ウィキペディア」を運営するウィキメディア財団が法案への抗議行動として、英語版のサービスを24時間に
わたり停止。検索最大手のグーグルも英語版のトップページで法案への反対署名を呼びかけるなど、抗議運動が広がった。

 こうした動きを受け、議会内では法案支持派の離反が相次いでいる。上院のリード院内総務は20日、「最近の出来事を考慮して」採決の延期を決めたとの声明を発表。下院司法委員会のスミス委員長も声明で「広範な合意が得られるまで」審議を遅らせると表明した。

 ネット業界が上下両院の決定を歓迎する一方、コンテンツ業界からは批判の声が上がっている。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)最大手フェイスブックの広報担当は「議会がネット業界の意見に耳を傾けてくれたことに感謝する。言論の自由やネット産業の革新を損なわない形で著作権侵害行為を防止するため、議会と協力して解決策を探る用意がある」とコメントした。これに対し、全米映画協会(MPAA)のドット最高経営責任者(CEO)は、法制化の流れを止めることは著作権侵害の助長につながると述べ、議会の対応を強く批判している。

(Reuters, January 20, 2012 他)

(庵研究員著)

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