採用活動でSNSの閲覧禁止、ドイツ政府が新たな個人情報保護法案

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採用活動でSNSの閲覧禁止、ドイツ政府が新たな個人情報保護法案

ドイツ政府は8月25日、職場における個人情報保護を強化するための新法案を閣議決定した。企業が採用活動にあたり、ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)で応募者に関する情報を収集することを禁止する規定などを盛り込んだ内容。今後、議会で法案を審議する。
 法案には従業員や求職者の個人情報保護に関するさまざまな規定が盛り込まれており、SNSの使用制限はその柱となるもの。具体的には企業や団体などが採用にあたり、FacebookやMySpaceといったSNSを利用して応募者に関する情報を収集することを禁止している。ただし、LinkedInのようにビジネス目的のサイトは規制の対象から除外されるほか、検索エンジンを利用してインターネット上で公開されている情報を閲覧することは認められる。
 私的ネットワークであるSNSには友人関係や宗教など個人に関するプライベートな情報が掲載されているため、今回の法案にはこうした情報をネット上で広く公開されている情報と明確に区別してプライバシー保護を図る狙いがある。法案が成立すればドイツは採用活動でSNSの閲覧を禁止する最初の国となるが、実際には企業がSNSを利用して応募者の情報を収集したかどうかを監視することは不可能に近く、逆に何らかの技術的手段を利用して一般には公開されていないSNSを閲覧することもできると考えられる。さらに雇用側には応募者に不採用の理由を伝える義務がないため、応募者がSNSに掲載された情報が原因で不採用になったことを証明することは極めて難しく、専門家の間では実効性に乏しいとの指摘がある。
 企業が従業員の採用にあたり、実際にどの程度SNSを利用しているかに関する興味深いデータがある。求人情報サービスCareerBuilderの調査によると、Facebookを利用して応募者に関する情報を閲覧したことがあると回答した企業は全体の45%を占め、このうち35%がそこで得た情報を基に不採用を決めたと答えている。

 法案にはこのほか、トイレ、更衣室、休憩室などにビデオカメラを設置して従業員を監視することを禁止するルールも盛り込まれている。セキュリティー上の理由から建物の入り口などに監視カメラを設置することはできるが、その場合は従業員への周知が義務付けられる。
(Deutsche Welle, August 25, 2010)

(庵研究員著)

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