「EU特許」構想に暗雲、英・仏・独3言語体制にイタリアが反発

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「EU特許」構想に暗雲、英・仏・独3言語体制にイタリアが反発

 EU共通の単一特許制度における使用言語をめぐり、イタリアが英語・仏語・独語の3言語体制への移行に反発を強めている。すべての加盟国で有効な「EU特許」の創設に向け、欧州委員会は英・仏・独語のうち1つの言語だけで出願できる仕組みの導入を提案しているが、イタリア政府は翻訳費用が不要となるフランスやドイツなどの企業が優遇されることになり、域内で「言語上の差別」が生じると批判している。欧州委は特許出願に必要な翻訳費用を最小限に抑えることが研究・開発(R&D)投資やイノベーションの推進につながるとして、年内の合意を目指す方針を示しているが、スペインも自国言語が選択肢から除外されることに難色を示しており、調整は難航が予想される。

 現在EU内で特許を取得する仕組みとしては、各国で出願して個別に審査を受ける方法と、欧州特許庁(EPO)に出願して「欧州特許」を取得する方法がある。
ただ、欧州特許も最終的な認可権限は各国の特許庁が握っているため、特許を取得したい国の制度に合わせてそれぞれ書類を用意しなければならない。これに対し、新たに創設されるEU特許ではEPOが認可権を持ち、企業は英仏独のいずれかの言語で書類を作成して出願することができる。これによって特許を取得したい国ごとに必要書類を翻訳する手間が省け、従来に比べて少ない費用で27カ国すべてで有効な特許を取得することができる。

 欧州委によると、EU域内の13カ国で特許を取得するために必要な費用は合計2万ユーロと米国(平均1,850ユーロ)の10倍以上に上り、このうち翻訳費用が約7割を占めている。一方、共通特許制度が導入されて1言語による出願・審査が可能になれば、翻訳費用は700ユーロ程度に抑えられ、EU特許の登録費用は6,200ユーロ以下に収まると試算している。

 英エコノミスト・グループが発行するEU情報専門の週刊紙ヨーロピアン・ボイスによると、イタリア政府は他のEU加盟国に宛てた文書の中で、欧州委のコスト計算は「偏った」「明らかに古い」データに基づいており、論理的根拠に乏しいと指摘。3言語体制への移行は各言語を母国語とするフランス、ドイツ、オーストリアなどの企業に有利に働き、自国企業は言語上の差別による不利益を被ると非難している。

(European Voice, July 29, 2010 他)

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