英政府がICT戦略ビジョン「デジタル・ブリテン」公表、著作権侵害対策の要旨

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英政府がICT戦略ビジョン「デジタル・ブリテン」公表、著作権侵害対策の要旨

 英政府は6月16日、情報通信技術(ICT)分野の戦略ビジョンをまとめた「デジタル・ブリテン」を公表した。245ページに及ぶ報告書は情報通信産業を現在の金融・経済危機を克服するための鍵と位置づけ、長期的にはデジタル新時代で英国が主導権を握ることを目的として、政府主導でブロードバンドの基盤整備やコンテンツ市場の活性化を促進することなどを打ち出している。英国は以前からコンテンツ産業の育成に力を入れており、今回の報告書にはクリエイティブ産業の振興に向けたインターネット上の著作権侵害対策も盛り込まれている。
 英国では約700万人が違法コピーされた音楽や映像などのファイルをダウンロードしているとみられ、報告書はこうした違法行為を防止してデジタルコンテンツ市場を活性化させるには、安価で利便性が高く、簡単にアクセスできる合法的なダウンロードサービスを普及させる必要があると指摘。第4章「デジタル世界における創造的産業」で違法ダウンロードを取り締まるための具体策について詳述している。これによると、通信・放送分野の監督機関Ofcomはインターネット接続業者(ISP)に対して以下のことを義務付ける権限が与えられる:
1.権利者から提出される合理的レベルの証拠に基づき、違法ダウンロードを行ったユーザーに対してその行為が著作権侵害に当たる旨を通知する
2.悪質な常習者については匿名の形でユーザー情報の収集を行い、裁判所からの命令があった場合は権利者に個人情報を提供し、権利者が法的手続きを取れるようにする。
 さらにISPから通知を受けたユーザーの行動を監視し、通知から1年が経過した時点で警告によって違法ダウンロードをやめたユーザーの割合が全体の70%に達しなかった場合、OfcomはISPに対し
1.サイト・IPアドレス・URLの閉鎖やはく奪
2.使用帯域の制御(通信速度の制限)を行い、音楽や映像などの違法ファイルをダウンロードできないようにする
― などの措置を講じるよう求めることができる。
 増え続ける海賊行為の影響で苦境に立つ映画や音楽業界は、違法ダウンロードの常習者に対して一定期間アカウントをはく奪するようISPに義務づけるべきだと主張していたが、デジタル・ブリテンの策定を主導した通信・技術・放送担当相のカーター卿は中間報告の段階で、ネット接続の遮断は支持できないとの立場を表明していた。

(Digital Britain: The Final Report, June 16, 2009)

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