金融取引情報の提供停止要求、米当局の盗聴疑惑で欧州議会が決議

海外ニュース

金融取引情報の提供停止要求、米当局の盗聴疑惑で欧州議会が決議

 欧州議会は10月23日の本会議で、テロ対策の一環としてEUが米国と結んでいる金融取引データの提供に関する協定の一時停止を求める決議案を賛成多数で採択した。米当局による盗聴活動に関する一連の報道の中で、米国家安全保障局(NSA)がベルギーに本部を置く国際銀行間通信協会(SWIFT)から不正に情報を入手していた疑いが浮上し、協定違反の可能性が出てきたため。欧州議会の決議に拘束力はないが、メルケル独首相の携帯電話が傍受されていた疑惑が表面化するなどEU内では米側に対する反発が高まっており、欧州委員会は米政府に対し、直ちに加盟国に対する情報収集活動の全容を明らかにするよう強く求める方針を示している。

 EUは2010年8月、米国が2001年の同時多発テロを受けて策定したテロ資金の根絶を目的する「テロ資金追跡プログラム(TFTP)」に基づき、域内での金融取引に関する情報を米当局に提供する協定を結んだ。個人情報保護の観点から、協定には情報提供の目的をテロ防止に限定することや、提供される情報を「必要かつ最小限」の範囲に制限するなどの規定が盛り込まれているが、ブラジルの大手テレビ局グローボによると、NSAはSWIFTのデータベースに不正アクセスし、EU市民の銀行取引に関する膨大なデータを極秘に入手していたとされる。
 
 欧州議会は欧州委に対し、米政府から明確な説明があるまでEU側からの情報提供を差し止めるよう要求。また、米側による協定違反の可能性が浮上しているにもかかわらず、EU加盟国が具体的な行動を起こしていない点を強く非難し、直ちに欧州刑事警察機構(ユーロポール)内に設置されたサイバー犯罪センターに捜査権限を与えるよう求めている。

 決議案をまとめたベルギーの元首相で欧州自由民主同盟の代表を務めるフェルホフスタット議員はロイター通信の取材に対し、「米国による情報収集活動、とりわけNSAの行為について全容が解明されなければならない。米当局が一般市民の個人情報も極秘に入手していたとすればとうてい受け入れることはできない」と述べ、米政府を強く非難した。一方、欧州委のマルムストロム委員(内務担当)は、米財務省のコーエン次官(テロ・金融犯罪担当)から米国がEUとの協定を尊重している旨の説明があったことを明らかにし、「これまでのところTFTP協定に対する違反行為の形跡はない」としたうえで、「米国からの書面による明確な回答を待っている段階だ」と述べた。

(Reuters, October 23, 2013 他)

(庵研究員著)

コメントを投稿する




*

※コメントは管理者による承認後に掲載されます。

トラックバック