仏写真家と米著名アーティストの著作権侵害訴訟、控訴裁がフェアユース認定

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仏写真家と米著名アーティストの著作権侵害訴訟、控訴裁がフェアユース認定

 フランス人写真家が米国の著名な現代アーティストのリチャード・プリンスを著作権侵害で訴えている裁判で、米連邦第2巡回区控訴裁判所は4月25日、プリンスの作品にはフェアユースの認定要件である「変容性」が認められず、著作権侵害にあたるとした一審判決を覆す判断を示した。米国では今回の判決を機に、美術作品のフェアユースをめぐる議論が活発化する可能性もある。

 プリンスはスチール写真や雑誌広告など、既存のイメージを作品に取り込む「アプロプリエーション」と呼ばれる手法を使ったビジュアル作品で知られる。
問題となっているのは、ジャマイカのラスタファリアン(アフリカ回帰を唱える宗教・社会運動「ラスタファリアニズム」の信奉者)を題材にしたパトリック・カリューの写真集「Yes, Rasta」を基に、プリンスが制作した一連の作品。
オリジナルがどの写真か判別できないほどまったく別の作品になっているケースもある一方で、被写体の顔を塗りつぶしたり、ギターを持たせたりするだけで、ほとんど手を加えずイメージをそのまま使用しているケースもある
http://paidcontent.org/2013/04/29/court-backs-artist-in-rasta-case-less-copyright-control-for-image-owners/)。
カリューは自分の写真が無断で使用されたとして2008年12月、プリンス本人と作品集「Canal Zone」シリーズの出版元を著作権侵害で提訴した。

 プリンス側はフェアユースを主張していたが、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所は2011年3月、プリンスはカリューの写真の本質を変えていないため、オリジナルな作品とはいえず、変容性の要件を満たしていないと指摘。また、写真集の出版でカリューが得た収入は8,000ドル程度であるのに対し、すでに名声を確立したプリンスの作品は最高200万ドル前後で取引されている実態に触れ、プリンスがカリューの作品を取り込んだ作品を発表することで、カリューに経済的な損失が及んだと分析。これらの理由から、プリンスによるカリューの作品の使用はフェアユースにはあたらないと結論づけた。

 第2巡回区控訴裁はこれに対し、カリューの「静謐で美しい」写真と比べてプリンスの作品は全体として「興奮を誘う、挑発的な」内容になっており、「原著作物からの変容性が認められる」と指摘。問題となっている30作品のうち、25作品についてはフェアユースと認定したうえで、残る5作品については一審裁判所にさらなる精査を命じた。ただ、3人の裁判官のうち1人は補足意見として、本来は裁判官が美術評論家のような役目を担うことは好ましくないため、一審裁判所は30作品すべてについて専門家の意見を聞いたうえで、改めてフェアユースにあたるかどうかを判断すべきだと述べている。

(paidContent, April 29, 2013 他)

(庵研究員著)

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