独バイエルン州が「わが闘争」を注釈付きで出版へ、著作権切れ後の悪用防止

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独バイエルン州が「わが闘争」を注釈付きで出版へ、著作権切れ後の悪用防止

 ドイツのバイエルン州政府は4月24日、同州が著作権を保有するナチスの総統ヒトラーの著書「わが闘争(Mein Kampf)」を注釈付きで出版する計画を明らかにした。著作権が切れる2015年末以降、偏った解釈の本が出回ってネオナチなどが宣伝に利用するといった事態を避けるのが狙い。ヒトラーが掲げた反ユダヤ主義などの思想が重大な誤りであるとの注釈を付けたうえで一般に流通させ、極右勢力などによって同書が神格化されるのを防ぐ。

 「わが闘争」は1920年代に刊行され、ドイツでは1936年以降、ナチス政権からの「結婚祝い」としてすべての新婚家庭に配られていた。同書の著作権は現在、ヒトラーが生前に住民登録していたバイエルン州が保有している。ドイツでは著作権保護期間が作者の死後70年間となっており、ヒトラーが1945年に自殺した同書の著作権は2015年末で切れる。

 「わが闘争」の出版自体が国内法で禁止されているわけではないが、バイエルン州政府はナチス讃美につながる恐れがあるとして、これまで一貫して同書の出版を認めてこなかった。同州は一般向けとは別に、学校で使用する教材用の出版も計画している。ナチスのイデオロギーがどのような惨状を招いたかを子供たちに正しく理解させるため、分かりやすい解説を付ける計画という。このほか電子書籍とオーディオブックも発行される見通しだ。

(Der Spiegel, April 24, 2012)

(庵研究員著)

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