英で「デジタル著作権取引所」に関する検討が本格化、来夏までに基本設計

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英で「デジタル著作権取引所」に関する検討が本格化、来夏までに基本設計

 英ビジネス・イノベーション・職業技能省(BIS)は11月23日、知的財産権制度の改革に関する諮問委員会の答申に盛り込まれた「デジタル著作権取引所(Digital Copyright Exchange=DCE)」の制度設計について具体的な検討を進め、来夏までに報告書をまとめる方針を明らかにした。通信・メディア監督機関Ofcomの元副会長リチャード・フーパー氏を中心とする作業部会が同構想の実行可能性について調査を行い、関係する各方面から意見を聞きながら共通理解を醸成してDCEの基本設計をまとめる。

 DCEの創設は、政府の諮問を受けてカーディフ大学のイアン・ハーグリーブス教授が作成した「知的財産と成長戦略の見直し」と題する報告書(ハーグリーブス・レビュー)で提言された10項目の施策の1つ。知的財産庁(IPO)は8月、ハーグリーブス教授の勧告を支持する方針を表明し、これを受けてBISがDCE構想について本格的な検討に着手した。

 ハーグリーブス教授が今年5月にまとめた報告書は「時代遅れ」の知財関連法が「英国の技術革新と経済成長を妨げている」と指摘。特に権利者保護に過度な比重が置かれた著作権法を見直して、デジタル時代に対応したルールを早急に整備する必要があると強調し、具体策としてDCEの創設を挙げている。

 同教授は著作権者が共通システムに基づいて著作物の利用を許諾できるオンライン取引制度を導入することで、著作物の合法的な流通を活性化し、クリエイティブ産業の成長を促すことができると指摘。DCEの創設を通じて2020年までに年間22億ポンドの経済効果が生まれると予測している。政府は答申を受け、DCEの基本的な制度設計や市場参加者に対するインセンティブなどについて検討を進める一方、国に著作権が帰属する著作物についてはDCEの開設と同時に同システムに基づくライセンス取引が可能となるよう準備を進め、国内の公的機関に対しても同様の取り組みを求める方針を打ち出している。

 ハーグリーブス教授は著作権者に新システムの利用を促すための具体策として
◇DCEが取り扱う著作物への侵害行為については通常より思い罰則規定を設定する
◇出版社やレコード会社がDCEを通じた著作物の流通を拒否した場合、著作者はただちに出版社やレコード会社との契約を破棄できる仕組みを導入する
◇DCEに参加しているウェブサイトがひと目で分かるよう、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)に表示方法の工夫を求める----などを提言している。

(Out-Law.com, November 25, 2011)

(庵研究員著)

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