英政府が著作権法の見直しに着手、フェアユース導入が焦点に

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英政府が著作権法の見直しに着手、フェアユース導入が焦点に

 英国のキャメロン首相は4日、デジタル時代に即した知的財産権制度の確立に向け、著作権法の見直しに着手したことを明らかにした。政府は来年4月をめどに著作権法改正の方向性と長期的視野に立った知財権制度のあり方について報告書をまとめる方針で、現在インターネットを利用した幅広いビジネスの振興を後押しする「フェアユース」規定の導入などについて検討が進められている。ただ、EUの厳格な著作権指令の下で加盟国が国内法を改正することは難しく、専門家の間では6カ月にわたる現行法の見直しに対して懐疑的な見方が出ている。

 キャメロン首相はロンドン東部のイーストエンド地区に情報通信技術(ICT)分野の有力企業を誘致し、「英国版シリコンバレー」を創設する構想の一環として、知財権制度の改革に言及した。同構想は2012年に開催される夏季五輪ロンドン大会のメイン会場となるオリンピックパークの跡地などにICT産業の集積地をつくり、イノベーションを推進して競争力強化と雇用創出を図るというもの。すでに英通信大手BTグループ、英携帯電話大手ボーダフォン、米検索大手グーグル、米半導体大手インテルなどが同地区への投資を計画しているという。

 首相は米国に比べて厳格な知財権保護規定がネックとなり、英国での起業を断念したというグーグル創業者の話を引き合いに出し、ネットビジネスへの参入を目指す新興企業にとって現行の知財権制度が大きな障害になっていると指摘。
「著作権法をネット時代に適合させるための見直しを進めている。米国と同様に英国でも創造的イノベーションを推進したいと考えている」と述べ、使用目的やコンテンツの内容などからみて適正な使用と認められる場合、権利者の許可を得ずに合法的に著作物を使用できるフェアユース規定の導入を軸に検討を進めていることを明らかにした。このほか今回の見直しでは著作権使用料の料率や知財権と競争法の関係性なども焦点になる。

 一方、英知的財産庁(IPO)は同日、公衆が特許審査プロセスに参加する「ピア・ツー・パテント(Peer to Patent)」と呼ばれるシステムを試験的に導入する方針を明らかにした。これは専門知識を持つ第3者が対象となる特許出願に関連した先行技術の調査を行い、文献情報を審査官に提供して審査に反映させる仕組みで、特許審査の拡充と効率化を図るのが狙い。こうしたピアレビュー方式は米国でも試験的に導入されている。

(BBC News, November 4, 2010 他)

(庵研究員著)

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