ネット遮断は「人権侵害」、仏憲法評議会が違法ダウンロード取締法に違憲判断

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ネット遮断は「人権侵害」、仏憲法評議会が違法ダウンロード取締法に違憲判断

 フランスで5月に成立したインターネット上の著作権侵害を取り締まるための規制法をめぐり、違憲審査機関の憲法評議会は6月10日、違法ダウンロードの常習者に対し、新たに設置する行政機関の権限でネット接続を遮断できるとした条項は憲法に違反するとの判断を下した。広く普及が進んだインターネットへのアクセスは表現の自由に不可欠な基本的人権の一部と指摘。著作権侵害に対する罰則のために行政機関が一方的にユーザーの権利を奪うことは許されないと結論づけた。

 「創造とインターネット(Creation et Internet)」と名付けられた新法は、増え続ける海賊行為の影響で苦境に立つ映画・音楽業界の要請でサルコジ大統領が自ら制定を主導してきた。これによると、新たに設置される専門機関「HADOPI」がインターネットユーザーの行動を監視し、違法ダウンロードの常習者を特定。最初は電子メール、2回目は書簡で警告を行い、3回目に違反行為が発覚した時点でインターネット接続業者(ISP)にアカウントのはく奪を命じることができるというという内容で(いわゆる「三振法」)、該当するユーザーは最大1年間にわたってインターネットへのアクセスを遮断され、この間は他のプロバイダーと新たに契約を結ぶこともできない。野党や人権擁護団体などは新ルールが導入された場合、インターネットのトラフィック監視を容認することになり、憲法やEU法が保障する基本的人権が侵害されるとして違憲審査を求めていた。

 憲法評議会は、現代社会においてインターネットへのアクセスは「1789年に制定されたフランス人権宣言が基本的人権の1つと定める表現の自由に含まれる」と表明。また裁判所ではなく、行政機関の判断でネット接続を遮断することは、同じく人権宣言が定める「推定無罪の原則にも反する」と指摘し、法改正が必要との見解を示した。

 憲法評議会の裁定を受け、サルコジ大統領はただちに関係閣僚に規制法の練り直しに着手するよう指示した。アルバネル文化相によると、HADOPIとは別にネット上の著作権問題を専門に扱う裁判所を設置し、裁判官に違法ダウンロードの常習者に対してネット接続を一時的に遮断する権限を与える案が浮上しているもよう。同相は6月末までに修正案をまとめて閣議で審議し、7月の臨時国会に提出したい考えを示している。

(EDRI-gram, June 17, 2009 他)

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