未受精卵からのES細胞作成技術は「特許の対象に」、EU司法裁が法務官見解を公表

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 EU司法裁判所は17日、ヒトの未受精卵から胚性幹細胞(ES細胞)を作成する技術は特許の対象になり得るとの法務官見解を明らかにした。受精していない卵子は、1998年の「バイオ指令」で特許が認められないと規定している「ヒト胚」には該当しないとの解釈を示したもの。最終的に司法裁が法務官の見解に沿った判決を下した場合、未受精卵から作成されるヒトES細胞を利用した再生医療の研究が大きく前進する可能性がある。

 今回の事案は、米インターナショナル・ステムセル社(ISCO)が開発した化学的および電気的刺激によって活性化されたヒトの卵子からES細胞を作成する技術について、特許は認められないとした英国知的財産庁(UK IPO)の決定をめぐり、英高等法院がEU司法裁に判断を求めていたもの。ISCOは受精していない卵子から作成されたES細胞がヒトに発達することはないため、バイオ指令第6条が規定するヒト胚の使用にかかる「特許性の除外」の対象には該当しないと主張していた。

 ヒト胚の使用に関する発明の特許性をめぐり、司法裁は2011年、受精後の卵子はいかなる段階のものもすべてヒト胚に該当し、たとえ科学的研究を目的としたヒトES細胞の使用であっても、ヒト胚の「産業的・商業的目的」での使用にあてはまるとの判断を示した。このため、EU内ではヒトの受精卵から細胞を取り出して培養し、ES細胞を作成する技術などで特許を取得することは不可能になっている。これに対し、ISCOの事案は受精していないヒトの卵子についての解釈が問題となっており、司法裁がどのような判断を示すか注目が集まっている。

 司法裁のビジャロ法務官は「受精卵と同様、未受精卵も細胞分裂や分化のプロセスに関与し得るという事実だけで、受精していない卵子をヒト胚とみなすことはできない」と指摘し、未受精卵からES細胞を作成する技術は特許性の除外の対象には含まれないとのISCOの主張を支持。そのうえで、倫理的・道徳的な理由から各国政府がこうした技術に対し、特許付与を拒否することは可能との考えを示した。

(Wall Street Journal, July 17, 2014 他)

(庵研究員)

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