超党派文化芸術振興議員連盟(略称・文化芸術議連)発足

棚野正士備忘録

IT企業法務研究所代表研究員 棚野正士

 2013年5月9日参議院議員会館で、超党派音楽議員連盟(略称・音議連)は総会を開き、規約を改正し名称を超党派文化芸術議員連盟(文化芸術議連)に変更した。  音議連は舞台入場税撤廃運動(注)がきっかけで1977年11月に発足し、音楽だけなく演劇、舞踊、演芸、伝統芸能等々文化芸術全体にかかわる日本の文化芸術振興を図る課題に取り組んできた。従来、音楽議員連盟の名称である「音楽」は「文化芸術全体」を象徴すると解されてきたが、今回の名称変更でその目的が明確になった。  新規約は第2条で、「この会(注:文化芸術振興議員連盟)は、音楽、演劇、舞踊、演芸、伝統芸能など実演芸術、映画及び美術等の文化芸術を通じて、国民のなかに豊かな情操を養い、またあらゆる機会をとらえて行政府、立法府の文化政策の方向について、抜本的な意識改革を目指す一方、わが国の実演芸術、映画、美術界等が直面する諸問題に対し超党派で寄与し、文化芸術振興を図ることを目的とする。」と謳っている。  総会で採択された2013年度活動計画は次の3項目である。

  1. 2014年度文化庁予算の大幅増額をめざす。
  2. シンポジウム「文化省の創設を考える(仮題)」を秋に開催する。
  3. 映画・映像問題研究会を秋に設置し、研究を進める。 デジタル化、グローバル化した社会のなかで、映画・映像の権利のあり方及び懸案の著作権・隣接権課題を検討する。

総会で選任された新役員は次の通りである(敬称略)。

会 長 河村建夫(自民) 副会長 塩谷 立(自民) 副会長 枝野幸男(民主) 副会長 松野頼久(維新) 副会長 斉藤鉄夫(公明) 副会長 松田公太(みんな) 副会長 市田忠義(共産) 幹事長 鈴木 寛(民主) 事務局長 伊藤信太郎(自民) 事務局次長 藤谷光信(民主)

事務局次長 浮島智子(公明)

 この日河村建夫会長は挨拶で「文化立国の考え方が重要であり、名称変更にはその思いがこもっている。外国では文化大臣がいるが、日本においても文化省設置を諮りたい。課題はたくさんあるが、みんなで一体となって文化立国の姿を高めたい。」と述べた。  また、文化芸術推進フォーラム野村萬議長は「世阿弥は“時々の初心忘るべからず”と言っているが、音楽議員連盟35年の初心を忘れることなく発展してほしい。」と祝意を述べた。なお、総会には文化芸術議連役員、会員である超党派衆参国会議員だけなく、文化芸術推進フォーラム加盟の芸術関係団体者数十名が参加した。

(注:音楽議員連盟の発足)

 文化運動史上、その息の長さにおいて、またそれにかかわる人々の裾野の広さにおいて特筆すべき運動がある。「舞台入場税撤廃運動」である。入場税撤廃というわずか五文字で表される運動に何十年の歴史がついやされ、この間に国会陳情のために国会近辺の銀杏並木の舗道を延べ何十万の人々が歩いた。  音楽議員連盟は舞台入場税撤廃運動から生まれた。「音楽議員連盟の発足」について、筆者は、1987年(昭和62年)発行「芸団協春秋20年」の「第5章 事業模様さまざま」を執筆し、この中に音楽議員連盟誕生の経緯を書いた。一つの参考資料として転載する。

「芸団協春秋20年第5章『事業模様さまざま』」から「音楽議員連盟の発足」(「芸団協春秋20年」318ページ)

「入場税問題は入場税法改正を求める運動であり、国会が議論の場である。このため、芸術家たちによる執ようなまでの陳情が行なわれるが、永年にわたる運動は芸術家と政治家の貴重なパイプをつくり出した。音楽議員連盟である。  現行著作権法が昭和45年5月6日に公布された直後の5月13日に、音楽愛好議員と(社)日本演奏連盟の懇談会が開かれた。このとき世話役の青木正久衆院議員は、「いままで政治家と音楽家の結びつきというものが殆どありませんでした。政治家は音楽にはなかなか目を向けません。先日も私は二期会の『カルメン』に招待して頂き、ロビーで会ったスペイン大使の与謝野さんに議員でもこんなところにくるのですか?と言われましたが、それほど政治家は音楽に無関心だったわけです。こんど私たちがみなさんによびかけたのは、超党派で政治家と音楽家の交流をはかりたいという気持ちからで、まったく他意はありません。もちろん話しあって行くうちには、入場税とか色々問題は出てくると思いますがーー」と述べている。(日本演奏連盟機関紙「えんれん」58号)(青木議員と日本演奏連盟の出会いは、昭和43年、東京新聞横溝亮一氏の紹介に始まった。)  この懇談会がその後青木正久議員と(社)日本演奏連盟西宮安一郎氏の相互の努力で、昭和52年11月24日の音楽議員連盟の発足となる。設立の辞は次の通り述べている。  『音楽議員連盟は、音楽を愛好する衆・参両院議員が超党派で集まり、音楽文化、音楽家の生活向上のために努力するのが目的であります。  文化国家を標榜してすでに久しく時が経ちましたが、音楽家の周囲は決して恵まれた状況にはありません。  国の文化予算も、もとより充分ではありませんが、舞台芸術のためには極めて僅かで、従って音楽の分野もその恩恵を余り受けているとは申せません。  私達はこのような事情をふまえて、音楽全般の環境づくりをいたしたいと存じます。即ち、対象は音楽のすべてで、洋楽・邦楽を問わず、楽器、レコードの問題も扱いたいと思います。  ここに私達志を同じくする議員が集まって国会における体制を整備し、音楽議員連盟として発足する次第であります。』  今日では、音楽議員連盟は超党派の衆参議員55名を会員として(昭和61年2月25日現在)、重点課題として、入場税撤廃を含む税制等に関する課題、著作権関連、文化予算拡充、第二国立劇場建設促進、職業演奏家(実演家)の労働条件、外来演奏家、伝統芸能の保存普及の課題に取り組んでいる。」

(追記:音楽議員連盟の立法)

 昭和52年(1977)発足した音楽議員連盟は、昭和58年「商業用レコードの公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する暫定措置法」(昭和59年5月25日廃止され、著作権法に取り込まれる)、平成13年「文化芸術振興基本法」など数々の議員立法を成立させてきた。平成24年を見ても、実演芸術振興の要となる「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」を制定して基本法を受けた個別法への取り組みを行い、また、日本の伝統文化の振興を図る「古典の日に関する法律」、インターネット時代に対応した違法ダウンロードに対処する著作権法改正等文化芸術における施策を進展させた。

以上

コメントを投稿する




*

※コメントは管理者による承認後に掲載されます。

トラックバック