ユネスコ芸術家の地位に関する勧告(1980)2014実態調査

棚野正士備忘録

―TPN発行「Theatre & Policy 2016.1.1 付け第94号」から―

棚野正士(IT企業法務研究所)

特定非営利活動法人シアタープランニンブネットワーク(TPN)(代表理事 中山夏織)(注)は法人化から15周年を迎えたことが、TPN発行「Theatre & Policy 第94号」に紹介されている。TPNの活動は演劇界に多大の貢献を果たしており、心からお祝いを言うと共に深く敬意を表したい。

「Theatre & Policy 第94号」で「ユネスコ芸術家の地位に関する勧告(1980)2014実態調査」が紹介されている。貴重な報告なので一部転用する。

記事によると、
「2014、ユネスコは1980年の勧告がいかに加盟国で反映されているか、とりわけ現代的な次の課題に着眼して実態調査を行った。

  1. デジタルテクノロジーとインターネット(著作権等)
  2. 芸術家の国家間移動(ビザや税制)
  3. 社会的保護(社会保障)
  4. 芸術表現の自由

60ヵ国と55民間団体(労働組合等)がそれに対して回答を寄せ、2015年10月、その分析結果が発表された。」
「少数ながらも、勧告を受けて、芸術家の法的な地位を位置づけた国々がある。カナダのケベック州やブルキナファソ、モロッコ等である。」
「なかでも、ベスト・プラクティスとして紹介されているのは、モロッコである。2003年に施行された芸術家の地位にかかわる法律は、実演家を労働法と社会的保護の見地から被雇用者としてみなすべく、エージェントの仕事と手数料を規定し、マイナーな仕事をも保護し、芸術家の威厳と社会にとっての重要性を謳うものになっている。」

記事は最後にこうまとめている。
「この分析結果を読みながら、著作権の保護は、芸術家の人権の言説として語られていることに気づいた。著作権ビジネスとして、とかく産業保護・育成ばかりが強調されがちだが、その本質には人権が存在するのである。この意味においても、勧告が存在していることをどれだけの国民が、芸術家が認識しているのだろう。芸術家自身の意識の向上が、まずは求められているように思われてくる。」

わたくしはユネスコ勧告を裏づけとして、「芸術家の地位に関する国内法の提案」と「芸術家の地位に関する基金の提案」は出来ないかと永年考えてきた。

「芸術家の地位に関する国内法」で言えば、2001年制定された「文化芸術振興基本法」の特別法として国内法を提案するという発想である。
文化芸術振興基本法第2条(基本理念)第2項は「文化芸術の振興に当たっては、文化芸術活動を行う者の創造性が十分に尊重されるとともに、その地位の向上が図られ、その能力が十分に発揮されるよう考慮されなければならない。」と規定している。
この基本理念を受けて、基本法の特別法として「芸術家の地位に関する国内法の提案」を試みたい。

「知的財産推進計画2015」は“はじめに”で、「クールジャパンに代表される知的財産としてのドラマ等のコンテンツは潜在的な成長分野として期待され、これらをビジネスに結び付けるコンテンツの海外展開は、知財戦略上重要である」と述べている。
映像コンテンツ、音楽コンテンツなどの振興は知財戦略上非常に重要である。
しかし、究極のコンテンツは俳優であり、音楽家であり、生きた人間である。この生きた人間、生きた芸術家を守る芸術家地位法が考えられても良いのではないだろうか。

(注1)特定非営利活動法人シアタープランニングネットワーク(TPN)(代表理事中山夏織):舞台芸術関連の様々な職業のためのセミナーやワークショップをはじめ調査研究、情報サービス、コンサルティングなど、舞台芸術にかかるインフラストラクチャー確立をめざすヒューマンネットワークである。国際的な視野から、舞台芸術と社会との関係性の強化、舞台芸術関連職業のトレ-ニングの理念構築とその具現化、文化政策・アートマネージメントにかかる情報の共有化、そしてメインストリーム・シアターとコミュニティー・シアターの相互リンケージを目的にしている。2000年12月6日、東京都よりNPO法人として認証され、12月11日、正式に設立された。

(注2)Theatre & Policy シアター&ポリシー(発行・編集人 中山夏織):TPNの基幹事業として2000年6月から定期発行(隔月・年6回)。定期購読(準会員)希望者はTPNファンドの郵便振替口座の摘要欄に「定期購読希望」と記載し、年会費3,000円を送金する。(郵便振替口座 00190-0-191663)

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