標準必須特許めぐりサムスンが欧州委と和解、モトローラの差し止め請求に違法判断

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 欧州委員会は4月29日、韓国のサムスン電子が通信関連の特許をめぐり、競合企業に対する差し止め請求を自粛する方針を打ち出したことを受けて、同措置を法的拘束力のある公約として受け入れたと発表した。欧州委はサムスンに制裁金を科すことを見送り、同社に対する調査を打ち切る。

 サムスンは2011年以降、自社が保有する第3世代携帯電話(3G)の通信規格「UMTS」に関連した特許について、米アップルによる特許侵害を主張して10カ国以上でアップル製品の販売差し止め訴訟を起こした。しかし、同特許はスマートフォンなどの開発に不可欠な標準必須特許となっており、サムスンは欧州における電気通信分野の標準化団体である欧州電気通信標準化機構(ETSI)に対し、いわゆる「FRAND」と呼ばれる「公正、合理的、非差別的」な条件で他社に使用を許諾することを約束していた。

 欧州委は12年1月、標準必須特許の侵害を理由とした差し止め請求はEU競争法に違反する可能性があるとして、サムスンに対する調査を開始。同年12月にはFRAND条項を順守せず、特許侵害を理由にライバルのアップルを市場から締め出そうとするサムスンの行為は市場支配的地位の乱用に当たるとの見解をまとめ、同社に対して異議告知書を送付した。

 サムスンは制裁を回避するため、昨年10月に和解に向けた是正策を提示。欧州経済領域(EEA)で特許ライセンスの枠組みに合意したすべての企業に対し、携帯端末の標準必須特許に関連した差し止め請求を今後5年間自粛することを約束した。欧州委は利害関係者から意見募集を行い、最終的にサムスンの提案を妥当な是正措置と認定した。

 一方、欧州委は同日、米グーグル傘下のモトローラ・モビリティーがスマートフォンに
関連した特許をめぐり、米アップルに対して同社製品の販売差し止めを求めている問題で、標準必須特許の侵害を理由とする差し止め請求はEUルールに違反するとの見解をまとめた。サムスンと同様、モトローラに対しても制裁金は科さず、競合他社に公平な条件でライセンスを提供するよう求めている。

 モトローラは11年、自社の3G通信規格などの標準必須特許が侵害されたとしてドイツでアップルを提訴。マンハイム地方裁判所はアップルによる特許侵害を認め、同社製品の販売差し止めを命じたが、欧州委はアップルの申立てを受けて12年4月からモトローラに対する調査に着手。昨年5月には、アップルに対する差し止め請求は市場における優位性を乱用した競争阻害にあたるとの予備的な判断を示していた。
 
 欧州委のアルムニア副委員長(競争政策担当)は「消費者がスマートフォンに関連した特許紛争の犠牲になることがあってはならない。特許権者が正当な報酬を得る権利は保障されなければならないが、同時に第3者が公正、合理的、非差別的な条件で標準化された技術にアクセスできるようにすることが不可欠だ」と強調。サムスンとモトローラに対する今回の決定は「標準必須特許の侵害を理由とする差し止め請求がどのような場合に反競争的とみなされるかについて、法的明確性を与えるものだ」と指摘している。

(European Commission Press Release, April 29, 2014 他)

(庵研究員)

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