英で「オリジナルから着想を得た」写真に著作権侵害の判決、「アイデアに対する権利保護」との批判も

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英で「オリジナルから着想を得た」写真に著作権侵害の判決、「アイデアに対する権利保護」との批判も

 英イングランドおよびウェールズの州特許裁判所(Patent County Court)は1月12日、オリジナルをそのまま模倣したものではないが、オリジナルから着想を得て撮影された写真が著作権を侵害しているとの判決を下した。

 同事案は国会議事堂とロンドン名物の赤い二階建てバスをモチーフとする写真の著作権を侵害されたとして、土産物やギフト用品などの製造・販売を手掛けるテンプル・アイランド・コレクションが同業のニュー・イングリッシュ・ティーズを訴えていたもの。同じ題材を扱った2枚の写真は構図やアングルが異なるものの、画像加工ソフト「フォトショップ」で同じ処理が施されており、共に議事堂を中心とするモノクロの背景とダブルデッカーの鮮やかな赤がコントラストを出している。
(http://www.dpreview.com/news/2012/01/25/Imitated_Image_Copyright_Case)

 裁判所は判決で、オリジナルの写真には構図とコントラストの両面で創作性が認められ、写真家の知的創作物といえると指摘。また、オリジナルには「熟考された選択と処理」が施されており、単なる写真とは異なる「写真作品」に分類されると説明。「難しい判断だった」としたうえで、問題となったニュー・イングリッシュ・ティーズの写真はオリジナルを構成する重要な要素を模倣していると結論づけ、「再生された要素の質的評価」に基づき、テンプル・アイランド・コレクションの主張を認める判決を下した。

 専門家の間では判決内容を疑問視する声が出ている。知的財産権を専門とするジェーン・ランバート弁護士は自身のブログで「論理は理解できるが、裁判所の判断は表現に対する著作権ではなく、アイデアに対する著作権の保護に向かっているようにみえる。これは非常に気がかりだ」と述べている。また、写真の著作権問題に詳しいチャールズ・スワン弁護士は、今回の判決を機に類似した訴訟が増えるとの見方を示し、「既存の作品のイメージを模倣した写真を撮影したり、制作を委託しているすべての関係者は判決内容を検証する必要がある」と警告している。

(Digital Photography Review, January 25, 2012)

(庵研究員著)

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