「視聴覚的実演条約」の外交会議を来年6−7月に開催へ、WIPO総会で決定

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「視聴覚的実演条約」の外交会議を来年6−7月に開催へ、WIPO総会で決定

 世界知的所有権機関(WIPO)加盟国は9月29日、ジュネーブで開催中の第49回総会(会期:9月26日−10月5日)で、2012年に「視聴覚的実演条約」に関する外交会議を開催することを決定した。視聴覚的実演の保護に関する同条約は、実演家から製作者への権利移転についてのルール(第12条)をめぐり10年以上にわたって議論が続いていたが、今年6月に開かれた著作権及び著作隣接権に関する常設委員会(SCCR)で加盟国の合意が成立し、SCCRからWIPO総会に対して外交会議の再開が勧告されていた。外交会議は条約交渉の最終段階であり、視聴覚的実演条約は成立に向けて大きく前進する。

 視聴覚的実演条約は1996年に採択された「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)」が音の実演を対象とし、視聴覚的実演の保護が含まれていなかったため、WPPTを補完する条約としてSCCRが2000年に草案を策定したもの。同年12月には視聴覚的実演の保護に関する外交会議が開催され、20の条文のう ち19の条文については暫定合意に達したものの、権利の移転に関する条項に関しては米国とEUの対立で議論が平行線をたどり、最終的に条約の採択が見送られた。その後、SCCRおよびWIPO総会で同条項について検討が重ねられていた。

 6月の第22回SCCRでは12条について米国、インド、メキシコが「締約国は実演家が視聴覚的実演の固定に同意した場合、実演家と製作者の間で反対の約定がない限り、本条約が規定する権利は製作者が保有・行使し、または製作者に移転することを国内法で定めることができる」との妥協案を提示。EUなどがこの共同提案を支持し、合意が成立した。一方、12条を除く合意済みの19の条文については再討議しない方針を改めて確認し、9月のWIPO総会で2000年から中断している外交会議の再開を勧告することで最終合意した。

 SCCRの勧告を受け、総会では来年6月または7月にジュネーブで外交会議を開催することを決定。また、外交会議での採択手続きなどについて最終調整を行うため、次回SCCRに合わせて11月に準備会合を開くことも併せて決定した。

 WIPOのガリ事務局長は声明で「一部の国は国内法で視聴覚的実演の保護に関するルールを定めているが、実演家はこれまで自分の関与した作品が国外でいつ、どのように使用されたか把握することができなかった。外交会議再開の決定はこうした問題の解決に向けた大きな一歩だ」とコメントした。

(WIPO Press Release, September 29, 2011)

(庵研究員著)

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