EUが特許制度を一元化、「EU特許」と「特許裁判所」創設へ

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EUが特許制度を一元化、「EU特許」と「特許裁判所」創設へ

 EU加盟国は4日開いた産業担当相理事会で、EU共通の特許制度を構築することで合意した。新たに「EU特許」を創設し、欧州特許庁(EPO)に出願して認められれば、すべてのEU加盟国で同じ効力を持つ特許を取得できるシステムを導入する。また、特許関連の紛争処理を専門に扱う「EU特許裁判所」を設置し、複数の国で特許の有効性や権利侵害などを争う場合も1カ所で審理が行われる仕組みに変え、訴訟にかかる企業や個人の負担軽減を図る。EU特許については欧州議会の承認、EU特許裁判所については欧州司法裁判所の意見聴取を経て実施に移す。

 欧州委員会は域内の特許制度を一元化することが技術革新を推進し、EUの競争力強化につながるとの立場から、2000年に「共同体特許」の創設を柱とする「共同体特許に関する規則(案)」を打ち出した。産業界は概ね新制度への移行を支持したものの、共通特許制度における使用言語などをめぐって加盟国の調整が難航し、議論が長引いていた。

 現在EUで特許を取得する仕組みとしては、各国で出願して個別に審査を受ける方法と、EPOに出願して「欧州特許」を取得する方法がある。欧州特許は複数の締結国において保護される複数の特許と位置付けられているため、EPOで審査を受ける場合も特許を取得したい国の制度に合わせてそれぞれ書類を用意しなければならず、特許の効力も国によってばらつきがある。これに対し、新たに創設するEU特許では出願の手続きが大幅に簡素化され、特許が認められれば域内のすべての国で同一の条件で権利が保護される。

 焦点の使用言語については別の規則案で検討が進められており、英語に一本化する案や、英語、フランス語、ドイツ語の3カ国語に限定する案が有力になっている。いずれにせよ、特許を取得したい国ごとに必要書類を翻訳する手間が省け、特許取得に要するコスト負担が大幅に軽減される。

 一方、EU特許裁判所は欧州司法裁判所内に設置され、法律と先端技術に関する高度な専門知識を持つ裁判官によって審理が行われる。現行システムでは特許関連の訴訟は国ごとに並行して進められるため、費用がかさむうえに異なる判決が出る可能性もある。欧州委によると、複数の国で訴訟を起こす場合の費用は少なくとも50万ユーロかかるが、特許裁判所が創設された場合、欧州企業全体で訴訟費用が年間2億8,900万ユーロ程度削減されると見積もっている。

(European Commission Press Release, December 4, 2009 他)

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