IT企業法務研究所 創作者の地位に関する研究網

Culture First推進86団体が私的録音録画補償金制度に関して下記意見書を報道機関にリリースしました。

IT企業法務研究所代表研究員 棚野正士


2013年4月1日
Culture First推進86団体
私的録音録画補償金制度

「作る、つなぐ、楽しむ」の関係をもう一度

SARVH(一般社団法人私的録画補償金管理協会)と株式会社東芝との訴訟が昨年11月9日に終結しました。私たちクリエーターにとっては大変残念な結果でしたが、そこで最高裁から示されたのは、私的録画補償金に関する現行法令の解釈にすぎず、私的録音録画補償金制度そのものが否定されたわけではありません。制度の今後の在り方については、まさに関係行政庁を含む当事者間の真摯な協議に委ねられたものと考えられます。
一方で現行制度が抱える問題点がこれまで一向に是正されないまま今日に至った結果、法律の条文には私的録音録画補償金制度が規定されていながら、それがほぼ機能しないという、きわめて異常な事態を迎えるに至ってしまいました。
この制度は、クリエーター、メーカー、そして音楽や映像を愛してくださるユーザーの三者が、「作る、つなぐ、楽しむ」というそれぞれの立場を維持・尊重しつつ、「Win Win Win」の関係となるために、この三者の利益を調整する役割を担ってきました。しかし、携帯用デジタル音楽プレーヤーが台頭し始めた頃から、実際にコピーに使用される機器・媒体と、補償金の対象となる機器・媒体に大きなずれが生じたために、制度の形骸化が急速に進み、今回の最高裁の決定がそれにさらに追い打ちをかける形となってしまったわけです。
今後も、ユーザーの方々が好きな音楽や動画に親しむ手段は、ますます便利に進化し、また、それらの手段を提供するメーカー等は、売り上げを伸ばしていくでしょう。しかし一方で、クリエーターへの補償の仕組みは機能不全のままという、このアンバランスな状態を、このまま放置してもよいのでしょうか?
新しい年度を迎えて、さまざまな場所で著作権に関わる議論が引き続き行われていくことと思いますが、ユーザーの利便性とクリエーターの保護の調整という役割を帯びたこの制度に関する問題は、著作権制度の今日的課題として、まさにその根幹に位置付けられると考えます。そうした議論の中で、私たちはこの調整の仕組みを修復しなければならないと考えています。それが私的録音録画補償金制度であれ、また新たな制度であれ、です。
私たちは、「作る、つなぐ、楽しむ」の関係の再構築に、新たな強い気持ちで取り組む所存です。みなさま方のご理解、ご支援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

以上

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