IT企業法務研究所 創作者の地位に関する研究網

「異床同夢」を共有してコンテンツの海外展開を

―尾木徹会長が“2013JAME新年の集い”で挨拶―

IT企業法務研究所代表研究員 棚野正士

 2013年1月10日、ザ・プリンスパークタワー東京で開催された「2013JAME(一般社団法人日本音楽事業者協会)新年の集い」で、尾木徹会長は1500人の出席者を前にして次の通り挨拶した。

昨年エンターテインメント業界は二つの喜びがあった。一つはパブリシティ権に関する最高裁の判決であり、もう一つは私的違法ダウンロードの刑罰化である。今年、日本音楽事業者協会は50周年を迎えるが、大きな問題を抱えている。一つは私的録音録画制度である。メーカーとの訴訟結果を踏まえて制度の不備を修正しなければならない。また、コンテンツの海外展開が課題である。そのために「異床同夢」を提唱したい。異床同夢を共有して海外展開をはかりたい。

 放送番組やアニメ、音楽、ファッションなどの芸術芸能文化や食文化の海外展開は重要な国家戦略である。尾木会長が提唱する異床同夢を共有して“日本復幸”をはかりたい。2012年「視聴覚的実演に関するWIPO北京条約」が成立して、俳優に関する権利のドアが50年振りに開いた。1961年の隣接権条約以来、ヨーロッパとアメリカの対立でドアは固く閉ざされていた。そこには映画製作者と実演家の対立があった。しかし、ネット上の侵害が横行する時代にあって映画影像製作者と俳優が敵対する時代ではなく、またEUとアメリカが対立する時代でもなくなってきている。こうした時代背景が条約成立に結びついたと考えられる。今、国際的にも「異床同夢」が求められている。

 「同床異夢」を変形した「異床同夢」は国内的にも国際的にも新しい時代を切り開く思想である。尾木会長は変形四字熟語で時代の思想を創り出す名手である。昨年「2012新年の集い」では、「共存共生」という”日本復興”にぴったりのコンセプトで新年会が開催され、尾木会長が「共存共生」から「共存共栄」へというスピーチをして、1500人の出席者に感銘を与えた。そして、 尾木会長は近江商人の経営哲学「陰徳善事」に触れて、「三方よし」という考え方を紹介した。「三方よし」とは、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という近江商人の経営理念である。これは「私的録音録画補償金制度」にも当てはまる。「権利者よし、メーカーよし、世間よし」である。

以上

コメントを投稿する





*

※コメントは管理者による承認後に掲載されます。

トラックバック