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「WIPO視聴覚実演条約」、北京外交会議で成立

IT企業法務研究所代表研究員 棚野正士

 LAITホームページ「C-Japan」で、庵研究員が「WIPOプレス・リリース 2012.6.15号」を紹介し、「世界知的所有権機関(WIPO)の視聴覚実演の保護に関する外交会議が6月20日-26日に北京で開催され、「視聴覚実演条約」の採択に向けた協議が行われる。俳優など視聴覚実演家の権利保護を目的とする同条約をめぐっては、実演家から製作者への権利移転に関する条文について12年前から議論が続いていたが、条約交渉の最終段階にあたる今回の会議でようやく成立する。」と報じている。

 視聴覚実演に関する保護は音の実演に関する保護と共に1993年からWIPOで議論されてきたが、音の実演については1996年「WIPO実演・レコード条約(WPPT)」が作成されたものの、視聴覚実演については、EUとアメリカの対立もあり、条約作成は取り残されてきた。
 2000年12月、ジュネーブで視聴覚実演の保護に関する外交会議が開かれ、「視聴覚実演条約」作成が期待されたが、EUとアメリカの対立のため、条約草案の前文及び内容に関する20条項の内、19条項については合意に達したが、権利の移転に関する1条項が合意に達せず、以来12年WIPOで議論を詰めていた。
 6月20日から始まった今回の北京外交会議では、視聴覚実演の保護に関する国際ルールが12年の歳月を経てようやく合意に達した。会議には185ヵ国が参加した。これによって1961年ローマ条約(実演家等保護条約)に規定された映画など視聴覚実演に関する国際ルールが、デジタル・ネット社会に対応するため50年振りに変わることになる。
 「WIPO視聴覚実演条約」は2012年6月24日北京時間19時30分(日本時間20時30分)に成立し、会議は6月26日北京時間17時30分、各国政府の署名セレモニーと主催国中国関係者や各国俳優代表などのスピーチがあり閉会した。
 なお、日本の実演家団体からは、芸団協、日本俳優連合(国際俳優連合FIAメンバー)、映像実演権利者合同機構(PRE)が出席した。日本政府の主席代表は在中国日本大使館堀之内秀久主席公使。
 外交会議に出席した芸団協野村萬会長はアジアの実演家を代表してスピーチし、出席した各国政府代表、国際機関代表に深い感銘を与えた。

「写真は会議風景(CPRA川崎氏提供)」

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以上

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