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Live Music is Best ―テナーサックス奏者・芦田ヤスシさん追悼演奏会―

IT企業法務研究所代表研究員 棚野正士

 2012年5月5日、もんてんホールで、日本を代表するテナーサックス奏者・芦田ヤスシさんの第1回メモリアル・ライブが、日本音楽家ユニオン関東地方本部ハウス会議主催で開催された。
芦田さんは、1929年東京生まれで、父芦田満さん(アルトサックス)は日本で最初にアルトサックスのアドリブソロを確立した戦前派ジャズプレイヤーで昭和初期の日本ジャズ界の草分けで、親子二代のサックス奏者として有名である。2011年10月6日、81歳で死去した。芦田さんは演奏活動で活躍する一方、日本音楽家ユニオンの前身日本音楽家労働組合委員長としても音楽家のために献身した。
芦田さんはいつも冗談を言って、周囲を楽しませる温かい人柄で、かつて芸団協機関紙(1984.9.10号)にこんなエピソードを書いている。

 「たくさんの音楽家が集まる事務所での出来事:ある昼下り電話のベル、電話をとったのは朴訥なKさん、しかし何やら異様な気配に事務所全員の耳目を集めました。何と彼の口から英語が飛び出しました。“ノーノー、アシダサン、ナウ、ノーノー・・・”、どうやら相手は外国人のようです。皆カタズを飲みました。ジロリと事務所を見渡した彼は、やおら手許の役員名簿を手に自信に満ちた顔でこう答えました。“アー、アシダサンテレホンナンバー、エフ、ハー、ツェー、ナイン、オクターブ・・・・”。ちなみに、これは日本の音楽家の使う数の符牒です。」(注:音楽家は日常会話で数字を符牒で言う。例えば「1万円貸して」という場合に「ツェー万貸して」という。)

 5月5日の追悼演奏には芦田さんのビッグバンド「メローノーツオーケストラ」の演奏家たちが参加した。アルトサックス川崎敦史・長嶋祐子、テナーサックス佐藤修・青山美貴子、バリトンサックス石松晴臣、トランペット佐々木秀治・大谷義夫、トロンボーン佐藤俊次、ピアノ久保政己、バス山口康広、ドラムス枝川淳一、ヴォーカル小西マリア。他に、ピアノ演奏川本真理の皆さん。

芦田ヤスシさん愛用の楽器の写真

 追悼演奏会のタイトル「Live Music is Best」は国際音楽家連盟(FIM)が永年掲げているキャッチフレーズである。今、時代はデジタル社会、ネットワーク社会に変貌しているが、ライヴこそ基本であることをこの日痛感した。「音楽コンテンツ」「デジタルコンテンツ」が叫ばれているが、「ライブコンテンツ」こそ究極のコンテンツであると改めて思った。そして、それを支えるのは音楽家の心であると強く感じた。
(写真は芦田ヤスシさん愛用の楽器)

以上

コメント

棚野正士 wrote:

“芦田ヤスシさんのこと”

元日本音楽家ユニオン事務局次長鈴木稀王さんからメールが届いた。鈴木さんとは一昨年品川の蕎麦屋で、芦田さんの永年の音楽仲間村田さんと一緒に懐かしい時代の思い出を蕎麦を食べながら楽しんだ。芦田さんは家から写真や新聞記事など昔の資料をたくさん持ってきて昔話を一杯してくれた。冗談好きの芦田さんは酒を飲みながら冗談ばかり言っていた。あれから一年経って、冗談好きの名ジャズマン芦田さんはいなくなった。
鈴木さんのメールにはこう書いてあった。

「メール有難うございます。芦田さん追悼演奏会の記事早速拝読しました。符牒のエピソードと『Live Music is Best』そして、「メローノーツオーケストラ」のメンバー紹介まで丁寧に盛り込まれたのは、短文ながら見識ある原稿だと思いました。この夏、沖縄キジムナフェスタ(注:沖縄で開かれる海外児童劇団公演フェスティバル)で海外公演を楽しみたいと準備しています。機会をみての再拝を楽しみにしております。健康にご留意を。鈴木稀王」
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2012-05-23 14:57:13

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