IT企業法務研究所 創作者の地位に関する研究網

有限責任中間法人映像実演権利者合同機構(PRE)平井和夫事務局長の早すぎる死

平井和夫事務局長の早すぎる死
―優れたシステム技術者であり優れた著作権人であった逸材の急逝―

IT企業法務研究所代表研究員 棚野正士(2009.3.17)

 著作隣接権業務の世界で、実務家として各方面から大きな期待が寄せられていた逸材平井和夫氏が今年2009年1月17日急逝した。享年57歳の早すぎる死であった。
 平井氏は、プロのシステム技術者として永年高く評価され、同時に著作隣接権の研究者であり、又、日本の著作隣接権業務を背負う貴重な実務家であった。
 著作権法の中で、著作者の権利は1899年以後100年以上の歴史を有するが、実演家の権利は1970年以後40年の歴史でしかない。このため、同じ自然人でありながら実演家は著作者に比して、法的側面においても実務面においても、まだまだ発展途上である。
 著作隣接権、特に実演家の権利の法的発展と実務的基盤整備を目指して、平井氏は映像実演権利者合同機構(PRE)事務局長として組織の発展に尽くすと共に、映像に係わる実演家の権利を行使するための電子許諾システム・PREXを日本で初めて開発した。
 法的権利の拡大は、実務的基盤整備の確立なしには進まない。PREXは単にPREという一組織のシステムに終わるものではなく、日本の実演家全体の財産ともなるシステムであると言えた。日本モデルが出来て日本全体の実務基盤が整備されると、実演家の権利の法的拡大が可能となる。又、国際ルールも整備されて視聴覚的実演に関する国際条約も前進する。
 そうした実演家の権利の将来にわたる永い道程の中に、平井和夫という一人の逸材が黙々と真面目に一生懸命誠実に歩いていた。時代はシステム技術の専門家であり同時に著作権法の専門家であるという人材を求めている。平井氏はまさに時代が要請する人材であった。
 しかし、夢を追っていたその人材は急にいなくなった。これまでの激務がストレスとして彼にのしかかったのだろうか。
 平井和夫という著作権実務家の歩みを振り返り、これからの歴史に繋ぐために、日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター(CPRA)元事務局長山下睦氏に平井和夫追悼文を書き下ろしてもらった。山下氏も又システム技術と著作権法に通暁する優れた実務家であり、永年平井氏と共に肩を並べて一つの道を歩いてきた。山下睦氏の追悼文は平井氏にとって何よりの供養になるだけでなく、実演家の権利の運動史から見ても貴重な基本文献になると考える。
 なお、山下氏の追悼文と共に告別式におけるわたくしの弔辞を添付し、平井和夫氏の冥福を祈る。

以上

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