IT企業法務研究所 創作者の地位に関する研究網

韓国著作権法に見る実演家の“複製権”

大韓民国著作権法(1986年12月31日法律第3916号)第63条(録音、録画権等)は「実演家は、その実演を録音若しくは録画し又は写真で撮影する権利を有する。」と規定している。「写真で撮影する権利を有する」ことを定めていることは、我が国の著作権法における実演家の権利と異なる特徴である。
その後改正された大韓民国著作権法(1995年12月6日法律5015号)では、第63条(複製権)は「実演者は、その実演を複製する権利を有する。」と規定して、第2条(定義)14号(複製)で、複製とは「印刷、写真、複写、録音、録画若しくはその他の方法により有形的に固定し、又は有形的に再製作することをいい(以下、省略)」と定義している(著作権情報センター発行、金亮完訳「外国著作権法・韓国編」)。
我が国の著作権法では、複製とは「印刷、写真、複写、録音、録画、その他の方法により有形的に再製することをいい(以下、省略)」(第2条1項15号)と定義しているが、実演家については複製権ではなく、録音権及び録画権(第91条第1項)である。又“録画”は「影像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製することをいう。」(第2条1項14号)と定義されており、この中には静止した実演である写真による複製は含まれていない。実演家に対して他の権利者、すなわち著作者、レコード事業者、放送事業者、有線放送事業者は複製権である。
この問題について、加戸守行「著作権法逐条講義四訂新版」は「本項(注:91条1項)では、実演の録音・録画以外の複製権を規定しておりませんので、実演を写真に撮ったりスケッチすることには実演家の権利は及びません。(中略)例えば実演の舞台中継をテレビで流している場合にその一場面を写真に撮影することについては放送事業者の権利が働くのに実演家の権利は働かないこととなっておりますので、その間のバランス論が一つ将来の問題として残されています。」(480ページ)と述べている。
「歌舞伎の舞台で大見得を切った決定的瞬間であれば単純な連続動作よりも鑑賞的価値が高い」(前述逐条講義481ページ)ということも言え、実演家にとっては「録音権・録画権」か「複製権」かという問題は、実演家の実演の写真が無断利用されることの多い時代においては重大問題である。

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