未来の扉は背中で開ける ―日本音楽家ユニオン30年へのメッセージ―

棚野正士備忘録

棚野正士(IT企業法務研究所)

 1983年10月30日本音楽家ユニオンは創立され、2013年に30年を迎え、2015年8月25日付けで「未来にとどけ、音。音楽ユニオンのあゆみ」(全523ページ)を発行した。本稿はその中に寄せた音楽ユニオン30年へのメッセージである。
 日本音楽家ユニオンは日本演奏家協会と日本音楽家労働組合の組織合同により、1983年10月に発足した。組合員現在数5150人。

労働組合の法人格を有し、前身の団体から数えて約40年にわたって音楽家の社会的、経済的地位の向上と音楽文化の発展のための活動を続け、特にNHK、民放、レコード協会などとの間で出演料の取り決めを行っているほか、オーケストラにおける労働条件の改善においても成果を上げている。

会場ロビーでのモートン会長(右)とロイティンガー事務局長(左)

日本音楽家ユニオンご結成30周年を心からお慶び申し上げます。
 世界各国で音楽家あるいは俳優など実演家の地位の向上を進めてきたのはユニオンあるいはギルドです。1961年ローマ条約(実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約)ができましたが、この実演家保護の最初の国際秩序を創り上げたのはFIM(国際音楽家連合)です。ジュネーヴのWIPO(世界知的所有権機関)の図書館にはその生生しい動きがボロボロの資料から読み取れます。
 以降、1996年のWIPO実演・レコード条約(WPPT)でも2012年の視聴覚的実演に関するWIPO北京条約でも、FIMがFIA(国際俳優連合)と共に世界をリードしてきました。日本音楽家ユニオンはFIMのメンバーとして、又、FIMの執行委員国として重要な役割を果たされています。
 国内においても、音楽ユニオンはFIAのメンバーである日本俳優連合と共にユニオンとして芸団協を支え、実演家の社会的地位の向上に貢献してきました。
 今、日本は2003年から知的財産立国を国家戦略として掲げ、また近年は「クールジャパン推進」によるコンテンツ総合戦略に力をいれています。そこでは音楽コンテンツ、映像コンテンツなどの振興が提唱されています。
 しかし、究極のコンテンツは音楽家であり俳優であり、生きた人間です。この生きた人間を守る組織こそユニオンです。日本の音楽文化、芸術文化の振興のためにはユニオンが重要な役割を果たしています。
 日本音楽家ユニオンの事務局長であった故佐藤一晴さんから、「未来の扉は背中で開ける」と聞いた事があります。
 日本音楽家ユニオンが30年の歴史を踏まえ、その歴史にかかわった数多くの音楽家の思いを抱きながら未来の扉を力強く開けられる事を期待します。

(写真:FIM第15回大会が1995年東京で開催された際に、「芸団協の30年を語る宴」が11月6日東京會舘で開催され、FIM大会出席者はゲストとして出席した。写真は会場ロビーでのモートン会長(右)とロイティンガー事務局長(左)。)

コメント

棚野正士 wrote:
FIM(国際音楽家連合)、FIA(国際俳優連盟)が実演家の国際秩序を創りあげてきた。
日本音楽家ユニオンはFIMに加盟し理事団体であり、日本俳優連合はFIAに加盟し理事団体であある。日本の両団体は共にFIM・FIAを通して世界の秩序づくりに貢献している。そのことを考えると、国内においても、例えば「FIA・FIM日本委員会」を結成して、国内の秩序づくりについても国際組織の力を背景に運動するとどうかと考える。
2015-11-04 17:02:46

コメントを投稿する




*

※コメントは管理者による承認後に掲載されます。

トラックバック