作権侵害の調査機関HADOPIは「不経済で非効率」、仏文化相が予算削減を含む抜本改革を示唆

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作権侵害の調査機関HADOPIは「不経済で非効率」、仏文化相が予算削減を含む抜本改革を示唆

 フランスはインターネット上の著作権侵害対策として、2度目の警告から1年以内に侵害行為を繰り返した違反者に対し、ネット接続の遮断を含む制裁を科す「スリーストライク制」を導入しているが、政府内では著作権侵害の事実関係について調査を行う独立機関「HADOPI」が十分に機能していないとの声が上がっており、大幅な予算削減などの措置がとられる可能性が高まっている。

 2009年に導入されたスリーストライク法によると、HADOPIの権利保護委員会は権利者からの申立てを受けて著作権侵害行為の有無について調査を行い、違反行為が確認された場合、違反者に法律順守を促す警告書を電子メールで送付する。最初の警告から6カ月以内に著作権侵害行為が繰り返された場合、1度目と同じ内容の警告書をメールと郵送で送付する。2度目の警告から1年以内に再び違反行為が繰り返された場合は違反者に訴追の可能性がある旨を郵送で通知したうえで、裁判所に提訴する権限を持つ。

 フィリペティ文化・通信相は仏ニュース週刊誌「Le Nouvel Observateur」とのインタビューで、HADOPIが設立からこれまでに送付したメールと郵送による警告文はそれぞれ100万件、9万9,000件に上るものの、訴追に至ったケースは134件にとどまり、このうち裁判所が有罪と認定したケースは1件もないと指摘。
「100万通の電子メールを送信するためだけに年間1,200万ユーロの予算と60人の専門職員を動員している」のが現状で、「完全に非経済的かつ非効率」と断じ、HADOPIの運営方法について「大幅な予算削減」を含む抜本的な見直しが急務との認識を示した。

 一方、政府は先に、有料テレビ大手キャナル・プリュ(Canal+)のピエール・レスキュール前社長を「著作権侵害の将来」と名づけた諮問委員会の委員長に任命し、デジタルメディアの普及に伴うネット上の著作権侵害を防止するための対策について新たな検討に着手した。レスキュール氏はLe Nouvel Observateur誌とのインタビューでスリーストライク法に触れ、少なくとも現状ではネット接続を遮断するといった制裁は実施不可能と指摘。「罰則に主眼を置いたことがHADOPIの失敗につながった」と語っている。

(The Register, August 6, 2012 他)

(庵研究員著)

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