EU司法裁がSNSに対するフィルタリング義務化を否定、著作権管理団体の要求却下

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EU司法裁がSNSに対するフィルタリング義務化を否定、著作権管理団体の要求却下

EU司法裁判所は16日、著作権保護されたコンテンツの違法な流通を阻止する目的で、ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)に対してフィルタリングシステムの導入を強制することはできないとする判決を言い渡した。司法裁は昨年11月、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)に対するフィルタリング義務化を違法とする判決を下しており、フェイスブックやグーグル傘下のユーチューブをはじめとするSNSを標的とした今回の裁判でも同様の判断が示された。

 今回の事案はベルギーの著作権管理団体SABAMが2009年6月、同国のSNSであるネットログ(Netlog)に対し、違法コンテンツを遮断するフィルタリングシステムの導入を求めて訴えていたもの。SABAMはネットログの加入者がプロフィールページに著作権保護された音楽や画像ファイルを無断で投稿し、ユーザー同士でファイルを共有していると主張。ただちにユーザーによる著作権侵害行為を阻止するための対策を講じると共に、違反した場合は1日につき1,000ユーロをSABAMに支払うよう求める訴訟をベルギーの第一審裁判所に起こした。これに対してネットログ側は、フィルタリングシステムの導入はユーザー行動の監視につながり、事業者にそうした監視システムの導入を強制することはEUの電子商取引指令に抵触すると反論。
第一審裁判所がEU司法裁に判断を求めていた。

 司法裁は判決で、ネットワーク上のコンテンツ流通を監視するシステムの導入はコストや技術面でSNSにとって大きな負担となり、事業者が自由にビジネスを行う権利を奪うおそれがあると指摘。また、個人情報保護や自由なコミュニケーションといったユーザーの基本的人権を侵害する懸念もあるとし、顧客によるネットワーク上のトラフィックを自己費用で監視することをSNSに義務づけることは「知的財産権の保護と自由に事業を行う権利のバランス」を損ない、EU法に合致しないと結論づけた。

(Financial Times, February 16, 2012 他)

(庵研究員著)

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