米でクラウドベースの「ラジオ版DVR」サービス開始、著作権問題が成否の鍵に

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米でクラウドベースの「ラジオ版DVR」サービス開始、著作権問題が成否の鍵に

 オンライン音楽配信サービスMP3.comの創始者として知られるマイケル・ロバートソン氏が2月23日、ユーザーが自分の好きなラジオ番組をクラウド上で録音・保管して、好きな時にパソコンやスマートフォンなどさまざまなデバイスで再生できる新たなサービス「Dar.fm」を開始した。

 Dar.fmの名称はデジタルビデオレコーダ(DVR)を捩った「デジタルオーディオレコーダ(DAR)」と、「FM(周波数変調)」を組み合わせたもの。Dar.fmのサイトでユーザー登録すると、まず2GBのストレージ容量が無料で提供され、およそ600の地上波ラジオ局で放送される番組から好きな番組を選んでクラウド上で録音することができる。技術的にはロバートソン氏が現在、最高経営責任者(CEO)を務めるMP3Tunes.comの「パーソナル・ミュージック・ロッカー(personal music locker)」と呼ばれるシステムを利用して、最大100時間分の録音がサーバーに保存される仕組み。ユーザーはパソコン、スマートフォン、タブレット型多機能端末、スマートテレビのRokuなどさまざまなデバイスを利用して、好きな時に録音した番組を再生することができる。

 このほかユーザーは番組名や放送時間帯などを基に、録音したい番組のスケジュールを作成・管理することができ、MP3Tunes.comから有料でストレージ容量を追加取得することも可能。ロバートソン氏は今後、広告収入を柱とするビジネスモデルを確立したい考えで、対象機器に関してはデジタル家電やモバイル機器への対応を強化し、デバイスフリーを目指すと説明している。

 ただ、Dar.fmが技術面でMP3Tunes.comのシステムに依存しているため、音楽業界から新サービスが著作権侵害にあたるといった批判が出る可能性もある。実際、MP3Tunes.comはレコード会社の許諾を得ずに楽曲をエンドユーザーにストリーミング配信している点が問題視され、現在、EMIとの間で係争中だ。

 一方、Dar.fmと類似したサービスを事実上、合法と認定する判決も出ている。
米ケーブル大手ケーブルビジョンが2006年、家庭の録画機に代わってネットワーク側でサーバー上に録画したテレビ番組を蓄積し、加入者が自宅のセットトップボックス(STB)を使って番組を再生できる「ネットワークDVR」と呼ばれるサービスを開始したところ、主要テレビネットワークと大手映画会社がただちに著作権侵害で同社を提訴。第1審は原告側の訴えを認め、ケーブルビジョンに計画の差し止めを命じた。ケーブルビジョンはこれに対し、録画したコンテンツはサーバー上に保存されるものの、実際にコンテンツのコピー操作を行うのはユーザーであり、ネットワークDVRは通常のDVRと本質的に同じサービスで著作権侵害にはあたらないと反論。控訴裁判所はケーブルビジョンの主張を認め、一審の差止め命令を無効とした。原告側は判決を不服として上告したが、連邦最高裁判所は昨年、上告を棄却し、ケーブルビジョンの逆転勝訴が確定している。

(The New York Times, February 23, 2011 他)

(庵研究員著)

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