「ISPに違法ダウンロードの責任なし」、豪州の著作権侵害訴訟で映画業界敗訴

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「ISPに違法ダウンロードの責任なし」、豪州の著作権侵害訴訟で映画業界敗訴

 オーストラリア連邦裁判所は4日、インターネット接続業者(ISP)に対してサービス加入者による違法ダウンロードの責任を負わせることはできないとする判決を下した。インターネット上の著作権侵害行為に対するISPの法的責任について裁判所が判断を示した初めてのケースで、今回の判決が世界各地で提起されている同様の訴訟に影響を与える可能性がある。

 米ユニバーサル・ピクチャーズやワーナー・ブラザーズをはじめとする大手映画会社は2008年、ISPにはユーザーによる映画やテレビ番組などの違法ダウンロードを阻止する義務があるとして、豪州3位のISPであるiiNetを著作権侵害で提訴した。
映画会社側はiiNetのサービス加入者によるBitTorrentを利用したファイル交換の実態を調査したところ、1週間に約3,000件の違法ファイルがネットワーク上でやり取りされたなどと指摘。iiNetが加入者によるこうした違法行為を阻止する手段を講じなかったことは著作権侵害にあたると主張し、違法ダウンロードを繰り返す悪質なユーザーのアカウントをはく奪してネット接続を切断することや、違法サイトの閉鎖などを求めた。iiNetはこれに対し、原告側の要求に従ってユーザーのネット接続を切断することは、プライバシーの侵害や言論の自由の制限につながると反論していた。

 連邦裁判所のDennis Cowdroy判事は判決文で、iiNetはサービス加入者による違法ファイルのやりとりを認識しながらそれを阻止しなかったが、そのことで同社がユーザーの違法行為を是認したとはいえないと指摘。ISPにユーザーの行動を監視する権限はなく、著作権侵害の責任を負わせることはできないと結論づけた。

 iiNet首脳は判決を歓迎し、映画業界と協力して今後は違法ダウンロード対策を強化する考えを示した。一方、映画やテレビ番組などの著作権保護を目的とする業界団体AFACTは判決を不服として上訴する可能性を示唆すると共に、著作権法の改正に向けて政府や議会への働きかけを強めていく方針を示している。

(Sydney Morning Herald, February 4, 2010 他)

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